「こんにちは……、ん」
よろず屋に入ると、スライムさんの像、みたいなものが足元に置いてあった。
大きさはスライムさんと同じ。
色は濃い灰色だから本人とまちがえることはないけれども、形はそっくりだった
なんだろう。
「いらっしゃいませ!」
スライムさんがカウンターの上に出てきた。
「あ、こんにちは。これなに?」
「これはぼくの、せきぞうです!」
「そうなんだ」
誰かに作ってもらったんだろうか。
「きょうはどうかしましたか?」
「あ、えっと、売ってるかどうかわからないんだけど」
「実はね。ちょっと、おとなりの家で、飼ってた犬が死んじゃったって聞いて」
「それはそれは」
「だから、もしかしたら売ってるかなって思って」
「いきかえらせるのですね?」
「お墓を……、え?」
「ちょっとまっててください!」
「え、ちょっと!」
スライムさんは止める間もなく、お店の奥へと行ってしまった。
それから、ちょっとしょんぼりした様子でもどってきた。
「ごめんなさい。いきかえらせる、とくべつなやくそうは、きのう、うっかりたべてしまいました……」
「そんなのあるんだ……」
「とってもおいしいんですよ。こんど、えいむさんもたべましょうね」
「生きてる人が食べて、だいじょうぶなの?」
「はい! 10まんごーるどもするので、まいにちはたべられませんけども!」
「それはいらない!」
そんな食べもの、食べた気がしない。
「いらないんですか? おいしいのに……」
「もったいないから、生き返らせるのだけに使ったほうがいいと思うよ」
「でも、いきかえっても、ぞんび、になってしまうことがおおいので、おいしくたべたほうがいいんですよ」
「ええと……」
言いたいことがいろいろありすぎて、逆になにも言えなくなってしまった。
「あ、そうだ、今日は、犬のお墓が売ってるか、ききにきたの」
「おはかですか?」
「うん。目印になればなんでもいいけど、なんでもいいって、難しいでしょ?」
母が、おとなりさんとしてきた話だった。
死んでしまった犬のお墓をきちんとつくりたいという。
できれば楽しい思い出がよみがえるようなものにしたいという。
でも、石や棒、エサの入れ物では、ちょっとちがうという。
「おもいでになる、おはかですか……」
「なにかない?」
「はっ」
スライムさんが目を大きく開いた。
「じゅんきん、のおはかだと、ぴかぴかです!」
「値段が高すぎるでしょ!」
それに全然関係ない。
「では、りゅうごろしのけん、をあえておはかに」
「竜殺しは竜を殺すのに使って!」
全然関係ない。
「いえをたてれば、きねんになります」
「お墓でおねがい!」
「うーん」
スライムさんは、つぶれたり、四角くなったりしながらうなっていた。
スライムさんに相談するんじゃなくて、なにがほしいのかはっきり決めてから来たほうがよかったのかもしれない。
よろず屋はたくさんのものが売っているけれども、なにがほしいか相談しに来るところではないから。
私はスライムさんの銅像を見た。
「このスライムさん像って、どうやってつくったの?」
「これですか? これは、このいしが、とくべつなんです!」
「石が?」
「このいしはですね。いきものが、うえにのったあと、しばらくすると、おなじかたちにへんかするんです!」
「同じ形に? 乗っただけで?」
「そうです! みるみるできます」
「みるみる」
「はい、みるみる」
「これって、死んじゃってても平気なのかな」
「へいき、です、よ?」
わからないようだった。
「やってみてもいいかな?」
「はい!」
「うまくいってよかったですね」
スライムさんは言った。
あれからすぐ家に帰り、母と一緒に、おとなりさんと話をした。
おとなりさんの犬は、まだ死んでしまったばかりでベッドに眠っていたので、よろず屋に連れてきてもらい、新しく用意した像の椅子の上にのせた。
するとちゃんと、犬の像になった。
色はちがうけれども、生きていたころのようにきれいな形をしていて、にせものとわかっているのに本物のようだった。
「いいおはかができて、よかったですね」
「うん」
おとなりさんは、悲しそうだったけど、うれしそうだった。
よろず屋に入ると、スライムさんの像、みたいなものが足元に置いてあった。
大きさはスライムさんと同じ。
色は濃い灰色だから本人とまちがえることはないけれども、形はそっくりだった
なんだろう。
「いらっしゃいませ!」
スライムさんがカウンターの上に出てきた。
「あ、こんにちは。これなに?」
「これはぼくの、せきぞうです!」
「そうなんだ」
誰かに作ってもらったんだろうか。
「きょうはどうかしましたか?」
「あ、えっと、売ってるかどうかわからないんだけど」
「実はね。ちょっと、おとなりの家で、飼ってた犬が死んじゃったって聞いて」
「それはそれは」
「だから、もしかしたら売ってるかなって思って」
「いきかえらせるのですね?」
「お墓を……、え?」
「ちょっとまっててください!」
「え、ちょっと!」
スライムさんは止める間もなく、お店の奥へと行ってしまった。
それから、ちょっとしょんぼりした様子でもどってきた。
「ごめんなさい。いきかえらせる、とくべつなやくそうは、きのう、うっかりたべてしまいました……」
「そんなのあるんだ……」
「とってもおいしいんですよ。こんど、えいむさんもたべましょうね」
「生きてる人が食べて、だいじょうぶなの?」
「はい! 10まんごーるどもするので、まいにちはたべられませんけども!」
「それはいらない!」
そんな食べもの、食べた気がしない。
「いらないんですか? おいしいのに……」
「もったいないから、生き返らせるのだけに使ったほうがいいと思うよ」
「でも、いきかえっても、ぞんび、になってしまうことがおおいので、おいしくたべたほうがいいんですよ」
「ええと……」
言いたいことがいろいろありすぎて、逆になにも言えなくなってしまった。
「あ、そうだ、今日は、犬のお墓が売ってるか、ききにきたの」
「おはかですか?」
「うん。目印になればなんでもいいけど、なんでもいいって、難しいでしょ?」
母が、おとなりさんとしてきた話だった。
死んでしまった犬のお墓をきちんとつくりたいという。
できれば楽しい思い出がよみがえるようなものにしたいという。
でも、石や棒、エサの入れ物では、ちょっとちがうという。
「おもいでになる、おはかですか……」
「なにかない?」
「はっ」
スライムさんが目を大きく開いた。
「じゅんきん、のおはかだと、ぴかぴかです!」
「値段が高すぎるでしょ!」
それに全然関係ない。
「では、りゅうごろしのけん、をあえておはかに」
「竜殺しは竜を殺すのに使って!」
全然関係ない。
「いえをたてれば、きねんになります」
「お墓でおねがい!」
「うーん」
スライムさんは、つぶれたり、四角くなったりしながらうなっていた。
スライムさんに相談するんじゃなくて、なにがほしいのかはっきり決めてから来たほうがよかったのかもしれない。
よろず屋はたくさんのものが売っているけれども、なにがほしいか相談しに来るところではないから。
私はスライムさんの銅像を見た。
「このスライムさん像って、どうやってつくったの?」
「これですか? これは、このいしが、とくべつなんです!」
「石が?」
「このいしはですね。いきものが、うえにのったあと、しばらくすると、おなじかたちにへんかするんです!」
「同じ形に? 乗っただけで?」
「そうです! みるみるできます」
「みるみる」
「はい、みるみる」
「これって、死んじゃってても平気なのかな」
「へいき、です、よ?」
わからないようだった。
「やってみてもいいかな?」
「はい!」
「うまくいってよかったですね」
スライムさんは言った。
あれからすぐ家に帰り、母と一緒に、おとなりさんと話をした。
おとなりさんの犬は、まだ死んでしまったばかりでベッドに眠っていたので、よろず屋に連れてきてもらい、新しく用意した像の椅子の上にのせた。
するとちゃんと、犬の像になった。
色はちがうけれども、生きていたころのようにきれいな形をしていて、にせものとわかっているのに本物のようだった。
「いいおはかができて、よかったですね」
「うん」
おとなりさんは、悲しそうだったけど、うれしそうだった。