よろず屋に入っていくと、カウンターの上でスライムさんが箱を見ていた。

 面の大きさがみんな真四角の箱で、開いている面がこちらに向いて倒れている。
 側面、両側にちょっとした穴があいていた。


「おや、えいむさん! いらっしゃいませ!」
「こんにちは。なにしてるの?」
「ふっふっふー。このはこ、なんだとおもいますか?」
「うーん。また転送の箱?」
「ちがいますねえ」
「なんだろう」

 横の穴は、あいてしまったというよりも、わざとあけたような、きれいなものだった。

「これは、よこからてをいれて、なかになにがはいっているか、あてるあそびをするための、はこだとおもいますか? おもいませんか?」
 スライムさんが試すような顔で私を見る。

「え? うーん……、じゃあ、当てる遊びをする箱だと思う」
「そのとおり! よくわかりましたね!」
「そんな気がした」
「えいむさんのかんがえは、するどいですねえ」
 スライムさんは感心していた。

 スライムさんはぴょこぴょこ動いて、箱の横にやってきた。
「さわっただけで、なにがはいっているのか、あてます。それじゃあ、えいむさん。やってみてください!」

 なんだか急に始まってしまった。

 私はカウンターの中に入って、箱の横、両側から、それぞれの手を入れた。
 私の角度からは箱の中は見えないけれども、お店の入口側に移動したスライムさんからは、よく見えているだろう。

「これでいいの?」
「はい! では」

 スライムさんは薬草をくわえてカウンターに上がると、箱の中に入れて、もどっていった。

「では、はこのなかみをあててください!」
「え? でも、いまスライムさん、いま箱の中に入れたの見え」
「ようい、はじめ!」

 スライムさんの宣言により、箱の中身当てが始まってしまった。
 しょうがない。

 見えないまま、私は箱の中央に手をのばす。
 指先にやわらかいものがふれた。

「お、お、えいむさん、さわりましたよ! さわりましたよ!」
 スライムさんは楽しそうに見ている。

「あー、あぶないかもしれないですねー。そんなふうに、ざつにさわったら、かまれちゃうかもしれませんよー。あー」
 スライムさんが演技をしている。
「これは葉っぱだね?」
「おっと! もうこたえがわかってしまったのか!」

「これは、やく……」
 と私が言いかけたとき、スライムさんの顔が一瞬、悲しそうになるのが見えて、私はとっさに答えを変えた。

「毒消し草かな?」
「おーっと、おしい! えいむさん、おしい!」
 スライムさんがぴょんぴょんはねる。

「これはなにそうだー? どくけしそうじゃないぞー! や? や?」
 と言いながら私を見る。

「や? やく?」
 スライムさんが私を力強く見る。
「……やくそう?」
「せいかーい!」
 スライムさんがぴょんぴょんはねる。

「いやー、こうふんしましたねー!」
「そうだね」
「ぼくはうまれてから、いちばんこうふんしました!」
「そんなに?」

 スライムさんは薬草を回収しながら、店内を見まわしている。
「つぎは、なににしましょうか」
「スライムさんは中身当て、やらないの?」
「ぼくは、てがないので!」

 言われてみればそうだった。
「じゃあ、スライムさんは目隠しして、箱の中に入ればいいんじゃない?」
「! めいあんですね!」

 私はスライムさんの目に細い布を巻いて目隠しをして、箱に中に入ってもらった。
 でも箱がせまかったので、外に出て、スライムさんは感触だけで、よろず屋の物を当てた。
「このくさは……、ぺろり。どくけしそうです!」
「正解!」
「やりました!」

 私は、目隠しをしたスライムさんに持っていく係になった。

 途中から、じゃまなので、と箱は使わなくなった。