その手を挙げた男子集団の中には、もちろん僕も入っていた。立候補なんて今までしたことがなかったから、選挙もしたことがない。だから声が震えそうだ。
だけど、どこかで聞き覚えのある、腹式呼吸を意識して声を出せば良いということを思い出した。
 ついに僕の番が来てしまった。席を立つ時に、真美に
「がんばれ!」
と言われた。たぶんというかほぼ確定で、隣の席だから言ってくれたのだろうが、これは頑張るしかないやつだ。

 「美化委員に立候補した、今村愛人です。もし僕が美化委員になったらこの学校を飛び出して、この地域全体をきれいにしていきたいと思います。どうか清き一票を、お願いします。」
我ながら良い出来だと思う。声も震えずできたし、噛まずにも言えたからだ。