黄見さんは、私の言葉を受けて、大きくうなずいた。

「承知いたしました。では……修行の手配を」

 黄見さんは立ち上がると、左手を水平に振って、結界を消した。
 そして、外にいた鬼神族の人に話しかける。

「すみませんが、夕樹さんをお呼びいただけますか」

 鬼神族の人は頭を下げて、階段を上っていった。

「夕樹さんにも、協力していただきましょう。この部屋にはいくつか牢屋が御座いますね。現在はほとんど使っておりませんから、夕樹さんに壁をすべて破壊してもらい、この部屋をひとつの大きな修行場として使いましょう。あたくしが結界を張ります」
「……だ、大丈夫なんですか? 部屋を壊しちゃって……」
「星夜様があたくしどもに命じたのは、地下で確実に歌子様を御守りすることのみ。あたくしが常に結界を張っていれば、それは達成できますもの。……結界のなかで、あたくしたちが何をしているかは、星夜様であっても知ることができません」
「星夜も、なんですね……」
「結界の能力はあたくしの家系のみが受け継いでおりますの。星夜様とて感知はできません」

 黄見さんの力も、やっぱり、相当のものなんだよね……。

「歌子様。星夜様は、助けには来ませんよ。しかし――それでも、強くなりたいのですね?」
「……はい!」

 私は、かたくうなずいた。

 強くなる。
 絶対に。

 そして、星夜の隣にいることのできる自分になるんだ。
 これからもずっと……夜澄島で、星夜と一緒にいるんだ!

「貴女様が星夜様をお助けくださるはず。信じております。……頑張ってくださいましね」

 黄見さんはそう言って、にっこりと笑った――このひとの目が笑っているところを、私は、初めて見た。