ボクたちは自動改札の傍に設えられた、イルカを模したオブジェの前で、その人物を待ち続けた。五分、十分、十五分……しかし、どういうわけか、一向に現れる気配が見えない。
真夏ちゃんほどの美少女に待ちぼうけを食わせるだなんて。いい度胸だ。相手はいったいどんな奴なのだろう。
ちらりとうかがう真夏ちゃんは、先ほどから熱心にスマートフォンの画面を見つめている。
「まなったーん」
結局、その人物がボクたちの前に現れたのは、約束の時間からニ十分が過ぎた頃だった。
へらへらと笑いながら、悪びれた様子もなく歩み寄って来た二十代半ばくらいのサーフ系男を、真夏ちゃんはいつになく糖度の高い声で「ジョーくん」と呼んで、心底嬉しそうに出迎えた。その両目は心なしか潤みを帯びていた。
飼い主を待ちわびた小型犬のような、出会ってから今まで一度だって見たことのない表情が、そこにあった。
ジョーという、そのいかにも軽薄そうな男に嫌悪感を抱いてから間もなく、真夏ちゃんのグロスで濡れた唇から衝撃的な一言が発せられた。
「紹介するね。わたしの彼氏のジョーくん」
「ども、城ヶ崎っす。よろしく」
男が肩まで伸びた艶のない金髪を掻き上げながら、この世の終わりみたいなウインクを一つ。
瞬間、三百デシベル超えの凄絶な轟音と共に、世界はボクの足元から真っ二つに裂けたのだった。
真夏ちゃんほどの美少女に待ちぼうけを食わせるだなんて。いい度胸だ。相手はいったいどんな奴なのだろう。
ちらりとうかがう真夏ちゃんは、先ほどから熱心にスマートフォンの画面を見つめている。
「まなったーん」
結局、その人物がボクたちの前に現れたのは、約束の時間からニ十分が過ぎた頃だった。
へらへらと笑いながら、悪びれた様子もなく歩み寄って来た二十代半ばくらいのサーフ系男を、真夏ちゃんはいつになく糖度の高い声で「ジョーくん」と呼んで、心底嬉しそうに出迎えた。その両目は心なしか潤みを帯びていた。
飼い主を待ちわびた小型犬のような、出会ってから今まで一度だって見たことのない表情が、そこにあった。
ジョーという、そのいかにも軽薄そうな男に嫌悪感を抱いてから間もなく、真夏ちゃんのグロスで濡れた唇から衝撃的な一言が発せられた。
「紹介するね。わたしの彼氏のジョーくん」
「ども、城ヶ崎っす。よろしく」
男が肩まで伸びた艶のない金髪を掻き上げながら、この世の終わりみたいなウインクを一つ。
瞬間、三百デシベル超えの凄絶な轟音と共に、世界はボクの足元から真っ二つに裂けたのだった。