「今日じゃん!」
「は?」
「白石くん、ごめん! ボク、急用ができた!」
最後まで言い切る前に、ボクはもう走り出していた。
「ちょっと待てよ! いったいどうしたっていうんだよ!」
「今度ゆっくり話す! 本当にごめーん!」
後方数メートルの幼なじみはまだ何か叫んでいるが、もはやボクには雑音程度にしか聞こえていない。ここが図書館だということも忘れ、全力で両腕と両足を動作させる。
館内を出ると、外は炎天下。とろけるような盛夏の陽射しに、鼓膜を容赦なく震わせる蝉時雨。
ボクは二ヶ月前に書き上げたばかりの長編小説をマボロシ文庫大賞に投稿し、大賞を受賞し、そしてデビュー作の表紙を真夏ちゃんに担当してもらうという、そんなたいそうな目論みを胸に抱き始めていた。
真夏ちゃんがボクとの再会を望んでいない可能性ももちろん考えられたが、いやしかし人間には、どうにも抑えきれない感情というものがある。やるしかないと思った。そこに迷いはなかった。
「……っ」
道の途中、脇腹に痛みを感じ、太腿がつりそうになり、この鈍り切った身体はいよいよ体力の限界を迎えようとしていた。でも、それでもボクは、アスファルトを一心不乱に蹴り飛ばした。走ることを止めなかった。
「は?」
「白石くん、ごめん! ボク、急用ができた!」
最後まで言い切る前に、ボクはもう走り出していた。
「ちょっと待てよ! いったいどうしたっていうんだよ!」
「今度ゆっくり話す! 本当にごめーん!」
後方数メートルの幼なじみはまだ何か叫んでいるが、もはやボクには雑音程度にしか聞こえていない。ここが図書館だということも忘れ、全力で両腕と両足を動作させる。
館内を出ると、外は炎天下。とろけるような盛夏の陽射しに、鼓膜を容赦なく震わせる蝉時雨。
ボクは二ヶ月前に書き上げたばかりの長編小説をマボロシ文庫大賞に投稿し、大賞を受賞し、そしてデビュー作の表紙を真夏ちゃんに担当してもらうという、そんなたいそうな目論みを胸に抱き始めていた。
真夏ちゃんがボクとの再会を望んでいない可能性ももちろん考えられたが、いやしかし人間には、どうにも抑えきれない感情というものがある。やるしかないと思った。そこに迷いはなかった。
「……っ」
道の途中、脇腹に痛みを感じ、太腿がつりそうになり、この鈍り切った身体はいよいよ体力の限界を迎えようとしていた。でも、それでもボクは、アスファルトを一心不乱に蹴り飛ばした。走ることを止めなかった。