受賞者の欄には冬木真夏の名前が記載されていた。
真夏ちゃんは夢を叶えたのだ。
十七歳の夏の日。海の見える駅のホームで空飛ぶイルカを眺めながら、真夏ちゃんはボクに「イラストレーターになりたい」と熱っぽく語った。そんな彼女に「作家デビュー作の表紙は真夏ちゃんにお願いしたいな」だなんて冗談半分で伝えたことを、ボクはまるで昨日の出来事のように記憶している。
でもまさか本当に夢を叶えてしまうなんて――。
「数週間前に俺、なんとなく真夏んちに連絡したんだよ。真夏が電話に出ないことわかってて、でもほんの少しだけあいつが出ることを期待して。結局、ママさんにつながったんだけど、そこで全部教えてくれたんだ。ちなみに、あいつ今、東京にいるらしい。精神的にも安定してるって」
「……そうなんだ」
つぶやきながら画面を縦スクロールしていたとき、ボクはふと「マボロシ文庫大賞・募集要項」という文字を見つけ、思わず指を止めた。
何やら同出版社が主催する新人文学賞らしく、募集ジャンルは指定なし、受賞者はもれなく受賞作でのプロデビューが確約とのことだった。
もし、もし仮にボクがこの新人賞で大賞を取り、うっかり作家デビューなんかしてしまった暁には、仕事関係で真夏ちゃんと再会、なんていう展開もあり得るのではないか。不意にそんなおめでたい考えを巡らせ、
「…………」
次の瞬間には目を丸くしていた。
なんとこの大賞作の表紙を担当するイラストレーターというのが、今年のイラスト大賞最優秀作品賞受賞者、つまり真夏ちゃんだったのだ。
締め切りは八月十日――。
真夏ちゃんは夢を叶えたのだ。
十七歳の夏の日。海の見える駅のホームで空飛ぶイルカを眺めながら、真夏ちゃんはボクに「イラストレーターになりたい」と熱っぽく語った。そんな彼女に「作家デビュー作の表紙は真夏ちゃんにお願いしたいな」だなんて冗談半分で伝えたことを、ボクはまるで昨日の出来事のように記憶している。
でもまさか本当に夢を叶えてしまうなんて――。
「数週間前に俺、なんとなく真夏んちに連絡したんだよ。真夏が電話に出ないことわかってて、でもほんの少しだけあいつが出ることを期待して。結局、ママさんにつながったんだけど、そこで全部教えてくれたんだ。ちなみに、あいつ今、東京にいるらしい。精神的にも安定してるって」
「……そうなんだ」
つぶやきながら画面を縦スクロールしていたとき、ボクはふと「マボロシ文庫大賞・募集要項」という文字を見つけ、思わず指を止めた。
何やら同出版社が主催する新人文学賞らしく、募集ジャンルは指定なし、受賞者はもれなく受賞作でのプロデビューが確約とのことだった。
もし、もし仮にボクがこの新人賞で大賞を取り、うっかり作家デビューなんかしてしまった暁には、仕事関係で真夏ちゃんと再会、なんていう展開もあり得るのではないか。不意にそんなおめでたい考えを巡らせ、
「…………」
次の瞬間には目を丸くしていた。
なんとこの大賞作の表紙を担当するイラストレーターというのが、今年のイラスト大賞最優秀作品賞受賞者、つまり真夏ちゃんだったのだ。
締め切りは八月十日――。