二つの眼球が一枚のイラストを捉えている。



 海が見える駅のホーム。セーラー服を着た女子二人組。ベンチに座る彼女たちの頭上遥か遠くには、イルカのような大きな雲。そしてイラストの中央には、この作品のタイトルなのか「あの夏の笑顔を、もう一度」という文字が縦書きで表示されている。



 ボクは激しい動悸を感じながら、絞り出すような声で、



「何これ……どういうこと?」



 すると、



「あいつ、この作品で、大手出版社が主催するイラスト大賞の最優秀作品賞を取ったんだ」



「最優秀作品賞?」



「プロのイラストレーターとしてデビューすることも決まったらしい」



「それ、本当なの?」



「ちょっと待ってろ。今、サイトのURL送るから」



 言いつつ、白石くんがボクの手元からスマートフォンを取り上げる。



 ほどなくして、バッグの中のスマートフォンが小刻みに震え始めた。



 白石くんが送ってきたメールには、長々としたURLが貼りつけられていた。



 すぐにURLをタップし、二、三秒ほどでイラスト大賞公式サイトのトップページが表示されると、ボクはそこでようやく事実を事実として受け入れることができた。