「小秋?」



 そんな声をかけられたのは、二階休憩スペースのベンチで一息ついていたときだった。



 誰だろう。思いながら、右方を向く。



「……青石くん?」



「白石だ!」



 ボクは白石くんの顔を見るとどうにも、脊髄反射的に名前を間違えたくなってしまう性分らしい。



 久々に会った白石くんは相変わらずイケメンだった。デザイナーズブランドのロゴTシャツにくたびれたチノパン、足元はスニーカーといったなんでもないような格好も、彼が着こなすと妙に様になって見える。



 でもいったい、どうして白石くんがこんなところにいるのだろう。間違っても彼は、読書なんかするようなキャラではない。



「こんなところで何してるの? 受験勉強か何か?」



 すると、白石くんは実にあっけらかんとした口調で、



「まさか。涼みに来ただけだって。さっきまでここの近くの霊園に墓参りに行ってたんだ、俺」



「白石くん、おじいちゃんもおばあちゃんもまだご健在じゃなかったっけ?」



「一年ちょっと前……確か、おまえとコンビニで鉢合わせた日の前日じゃなかったかな。野球部時代のチームメイトがバキュームカーにはねられて、あの世に逝っちまったんだよ。道路に飛び出したガキを助けようとして。即死だったらしい」