八月半ば。ジョーこと城ヶ崎太一(じょうがさきたいち)が二十三歳という若さでこの世を去った。溺死だった。



 旅先での海水浴中、離岸流に巻き込まれた現地の外国人女児を助けようとして、そのまま二人帰らぬ人となったという報せを、ボクはまずSNSで知り、次に地元ローカルのスポットニュースで知り、そして夏休み明けの二年D組で知った。



 何やらジョーは、ネット上ではちょっとした有名人だったらしい。チャンネル登録者数十万人を誇る人気配信グループではリーダーを担当、来月にはなんと歌手デビューを控えていたのだという。その事実をボクは、つい最近まで何も知らなかった。



 始業式当日。午前八時過ぎ。教室に入るや否や、クラス中がジョーの話題で持ち切りだった。さすがは小さな片田舎である。ジョーが真夏ちゃんの恋人だという事実はすでにクラスメイトのほとんどに知れ渡っているようで、派手グループを筆頭に、普通グループ、地味グループまでもが会ったこともない人気配信者の死について、



「離岸流かあ」



「かわいそう……」



「ネット情報だと彼、背中に『真夏』ってタトゥーを彫ってたらしいよ。一途な人だったんだね」



 などなど、ああだこうだと偽善者ぶって騒ぎ立てていた。



 今、真夏ちゃんがこの場に現れたら、奴らはきっと彼女の周りを一斉に取り囲むに違いない。恋人を亡くした級友の気持ちなんて露知らず、彼女の心に土足で踏み込むつもりなのだ。



 ボクは急にこめかみの辺りに鋭い痛みを感じ、そして同時に真夏ちゃんのことがひどく心配になった。今日くらいは欠席してほしい。奴らの退屈しのぎのネタになんかなってほしくない。そう願った。