「白石くん」



「ん?」



「ありがとね」



 告げ、特保コーラを手に取り、今度こそ立ち上がる。



 ちょっと一人になりたい気分だった。一人きりで、自分自身と嘘偽りなく向き合ってみたい。そう思った。



「近々メールするよ。何か進展があったら必ず報告する」



「……了解。知ったような口利いて悪かったな」



「ううん、大丈夫」



 何が大丈夫なのか、自分自身にもよくわからなかったのだけれど。



 白石くんと別れたあと、ボクは真夏ちゃんのころころと変化する表情を頭の中に映し出しながら、自宅までの道のりを伏し目がちに歩いた。一歩一歩と歩を進めるたびにスカイブルーのクロックスが、熱を溜め込んだアスファルトとこすれる音がした。



 風船のように日々膨れ上がる真夏ちゃんへの気持ちは、いよいよ自制が効かなくなってきている。告白という選択肢は存在していなかったけれど、彼女に恋人ができてしまったことにより、そして何より白石くんとやり合ったことにより、ボクは自分自身の意識の変化を徐々に自覚し始めていた。



 道中、何気なくコンビニを振り返ると、もうそこに白石くんの姿はなかった。店内から漏れる安っぽい照明が、ただただ寂しげに田舎の夜を照らしていた。