やがてたっぷりと間を置いたところで、白石くんが急にこちらを向いた。切れ長の涼し気な瞳、通った鼻梁、シャープな輪郭。その嫉妬してしまうほどに整った顔は、まさしく真剣そのものだった。去年の冬、真夏ちゃんへの気持ちを打ち明けたときとまったく同じ表情を浮かべていた。



 ほんの少し、ほんの少しだけその表情にドキリとしてしまい、けれど、



「振られてこいよ」



「はあ?」



「題して、当たって砕けろ大作戦!」



「……もういい」



「ちょっと待てって!」



 白石和生、十七歳。なんて無神経な男なのだろう。



 ボクはコンマ数秒のうちに険のある表情を作ると、ほとんど自然にベンチから腰を上げていた。そんなボクを慌てて制止する白石くん。そして次の瞬間、彼はいつになく熱っぽい言葉をボクに向けて吐露した。



「マジな話、本当にこのままでいいのか? 確かに、告白なんてしなければ今の生温い関係を続けられるだろうよ。高校卒業まで、いや卒業後もきっと。でもさ、俺に言わせてみれば、それは逃げだね。ああ、何度でも言う。それは逃げだ。人を好きだっていう気持ちに男も女も関係ないだろ? なあ、小秋。おまえはどう思う?」



 直後、茶化されているような気がして腹立たしくなってしまった数秒前の自分を猛省した。この人は真剣だ。至って真剣だ。



 確かに、白石くんの言うとおりだった。人を好きだという気持ちに男も女も関係ない。でも――ああ、ダメだ。ボクのネガティブは通常営業中らしい。