有線から流行りのサマーチューンが流れる店内は、偉く冷房が効いていた。先客は一人。ジャージ姿の小汚いおじさんが、胡散臭いオカルト雑誌を立ち読みしているだけだ。そんな彼を横目にスイーツ売り場へと向かい、けれども直後、ボクはがっくりと肩を落とすことになる。なんと陳列棚には、お目当ての品が一つも並んでいなかったのだ。



「そんなあ……」



 うっかり漏れる、間の抜けた声。



 結局、ボクは特保コーラを一本だけ買い、そそくさとコンビニを出た。



「やけに早いな」



 ボクに気づくや否や、白石くんはいじっていたスマートフォンを鞄にしまい込み、あらためてベンチに座り直した。



 つき合っているコと連絡でも取り合っていたのだろうか。頭の片隅でそんなことを思いながら、



「お目当てのスイーツ、見事に売り切れだったの。だから、コーラ一本だけ」



「おまえ、昔からコーラ大好きマンだったよな」



「そんなことないよ。それに、正確にはマンじゃなくてウーマンじゃないかな、黒石くん」



「白石だっての!」



 こんなくだらないやり取りを何度か交わしたあと、ボクは白石くんの隣に大人一人分の距離を置いて座った。目の前には、偉く寂れた景色が広がっている。



 幹線道路沿いに建てられたこのコンビニから眺める夏の夜は、まさにザ・田舎だった。自動車は一分に数台しか通らないし、町の明かりは点々としていて頼りない。辺りではケラの鳴き声が響いているだけの、そんな地方都市の一風景。