「どうして優しい人ほど早死にしちゃうんだろうね」



 と真夏ちゃんが悲しそうな顔をしてつぶやいたとき、ボクは少しだけ考えたふりをして、



「うーん、どうしてなんだろう」



 と呑気な口調で答えた。



 ローカルテレビ局の美人気象予報士が、昨年より一週間以上も早い梅雨明けを宣言した日の午後。真っ白な陽射しが照らす、チョークの匂いに満ちた二年D組にはもう、ボクと真夏ちゃん以外に生徒の姿はない。日直を任されているボクは今、親友の真夏ちゃんを巻き込んで、放課後の業務の真っ最中なのだ。



 窓際最前列の席を二つ仲良くくっつけて、ボクと真夏ちゃんは対面した形で椅子に座っている。学級日誌のページに今日のクラスの様子を書き連ねているボクに、スマートフォンのニュースサイトに熱視線を送っている真夏ちゃん。



 道路に飛び出した小学生を助けようとして、バキュームカーにはねられて即死した地元市内の高校球児を、真夏ちゃんは心底不憫に思っているらしい。きりりと整えられた眉毛をハの字にし、今にも泣き出しそうな顔をしている。



 片やボクはその哀れ高校球児の死に様を、ベタだなあ、滑稽だなあ、くらいに思いながら、目の前の美少女にじっと見惚れていた。



 冬木真夏(ふゆきまなつ)、十六歳。十二月十二日生まれの射手座O型、バストサイズはエクセレントなEカップ。



 真冬生まれなのに真夏と名づけられた真夏ちゃん。真夏の太陽のような後光を放つ、いつも元気いっぱいの真夏ちゃん。そんな彼女にボクは今、熾火のような恋心を抱いている。