「やせ我慢しちゃって、握手くらいしてもらったら?」

「何言ってんのよ陽菜ちゃんたら」

「良いですよ握手くらい、ここには僕達しかいないんだから黙っていれば分からないですよ」

そう言って亨が右手を差し出すと『じゃあ握手だけ』一言そう呟いて矢嶋も右手を差し出した。

憧れの翔と握手をしてもらえた矢嶋であったが、この時ばかりはまるで少女の様であった。

「ありがとうございます翔さん。ではあたしは仕事に戻りますので」

そう言って矢嶋が陽菜の病室を後にすると、亨が陽菜に語り掛ける。

「陽菜薬飲んじゃえよ」

「そうだね」

そしてすぐに陽菜はその薬を飲んだ。

その後も亨と二人で会話を楽しんでいると、そこへ由佳がやって来た。

「やっほー元気してる?」

そんな由佳の目に映った思わぬ人物に少し驚いてしまう。

「翔さんどうしたんですか? もう車椅子に乗っても良いの?」

「あぁ、今日からな」

「良かったですね、これであたしが連れて行かなくても会えるじゃないですか。陽菜もよかったね」

「そうだね、ありがとう由佳ちゃん。これからは僕が出来るだけ来るようにするから」