「それがそうでもないの、またあの子怖いって言いだして手術を拒んでいるの。考えさせてほしいって言っているけどあの子きっと断るつもりよ」

『どうして、せっかく治るチャンスなのに』

「だからお願いがあるの、あの子の事説得して欲しいの。あたしが言ってもダメなのよ」

『分かりました。とにかく明日病院に行ってみます』

翌日亨はさっそく陽菜の説得をしに朝から病院に向かった。

「陽菜見舞いに来たぞ!」

「亨兄ちゃんどうしたの? 今日はいつもより早いじゃない、それにまだ面会時間には早いでしょ」

「看護師さんに言ったら入れてくれた。それより聞いたぞ! せっかくドナーが見つかったってのにお前迷っているんだって?」

「やっぱりその事で来たのね。ママに聞いたの?」

「あぁ夕べな。なに怖がっているんだよ、またとないチャンスなんだろ? このまま治らなくていいのか?」

「だって本当に怖いんだもん、ほんと怖いの、亨兄ちゃんに会えなくなることが怖いのよ」

「だけど病気が治ったら世界が広がると思うぞ! こんな狭い病室に一日中こもってなくて済むようになるし、今は病室から出られたとしても病院の敷地内だけなんだろ?」

「それは分かるけど、この恐怖感はどうにもならないよ」

この時陽菜は思わぬことを口にする。