彼の小説は難しいのだと、誰にも伝わらない愚痴を言いながら、1人になれるタイミングを見計らってページを操った。
段々と文字を追うスピードが早くなって、最初のうちには気がつかなかった伏線や、小さな仕組みを拾えるようになる。
それが思いの外楽しくて、知らない間に出版されている分は全て読み切ってしまった。
最初に読んだ話は男女の恋愛物だったのだけれども、北見が好んで書いたのは同性間の友人関係や上下関係を描いた、恋愛感情があまり絡まないストーリーであった。
次第に欲が出てくる。
今は書いている話はないのか。
どんな話にするつもりなのか。
北見はどんな話をするのか。
むくむくと湧いてきた興味に抗えずに、選択授業が被ったタイミングで、声をかけてみた。
案外北見はあっさりと私を受け入れて、そちらから話しかけてくることは無いにしろ、下らない話を聞いてくれるくらいには仲良くなった。
周囲が受験や就活に奔走する中、北見はいち早く有名大学への入学を決め、私は受験勉強がしたくないという理由で、専門学校を受験した。不純な動機だけれども。
大学合格が決まったというのに、北見は遊びに行くこともなく、放課後に人気の少ない教室でノートを広げていることが多い。
それは授業の復習だったり、進学先から提示された課題だったり、種類は様々だったけれど、たまに暇つぶしで、と差し出される短編小説目当てで、私もそこに入り浸っていた。
北見の隣は、自然と気を遣わなくていい。
友達と一緒にいるのとはまた違う、謎の安心感がある。
ふとした瞬間に彼を見つめて、愛おしいな、と思う瞬間が好き。
段々と文字を追うスピードが早くなって、最初のうちには気がつかなかった伏線や、小さな仕組みを拾えるようになる。
それが思いの外楽しくて、知らない間に出版されている分は全て読み切ってしまった。
最初に読んだ話は男女の恋愛物だったのだけれども、北見が好んで書いたのは同性間の友人関係や上下関係を描いた、恋愛感情があまり絡まないストーリーであった。
次第に欲が出てくる。
今は書いている話はないのか。
どんな話にするつもりなのか。
北見はどんな話をするのか。
むくむくと湧いてきた興味に抗えずに、選択授業が被ったタイミングで、声をかけてみた。
案外北見はあっさりと私を受け入れて、そちらから話しかけてくることは無いにしろ、下らない話を聞いてくれるくらいには仲良くなった。
周囲が受験や就活に奔走する中、北見はいち早く有名大学への入学を決め、私は受験勉強がしたくないという理由で、専門学校を受験した。不純な動機だけれども。
大学合格が決まったというのに、北見は遊びに行くこともなく、放課後に人気の少ない教室でノートを広げていることが多い。
それは授業の復習だったり、進学先から提示された課題だったり、種類は様々だったけれど、たまに暇つぶしで、と差し出される短編小説目当てで、私もそこに入り浸っていた。
北見の隣は、自然と気を遣わなくていい。
友達と一緒にいるのとはまた違う、謎の安心感がある。
ふとした瞬間に彼を見つめて、愛おしいな、と思う瞬間が好き。