「へ? 一緒に!?」
 「……それはさすがにまずかったですね――」
 「……敬語ナシ、って言ったのそっちだろ」
 「風呂入ってきてください」
 「分かったよ……」

 少し気まずい空気をこじ開けるように、僕は風呂場へと向かった。


◇◇◇


 風呂を上がると、ペディさんが料理を作っていた。白いエプロンだ。もちろん僕のなんかではないし、恐らくは持参のものだろう。随分と準備がいいな。
 
 「あ、あがるの早いね。ちゃんと洗った?」
 「ちゃんと洗ったよ」

 振り返らずにキッチンに目を向けたまま、僕に話しかける。
 てか、そんなに不潔か。ちゃんと洗ったつもりだぞ。でも別にこういう風に言われるのも、いじめという感じもしない。なんか懐かしいような。

 「もうちょっと待っててね、今できるから」
 「分かった。パンツはいてくるね」

 「―――んへぇッ?」



 「いただきます」
 野菜炒めに、餃子、ワンタンスープ。中華だね。好きだよ。僕。
 十分にすかせたお腹に、ワンタンスープを流し込む。

 「あぁ、美味しい」
 「ほんと? うれしいな」

 お世辞抜きに、うまい。天下一品だ。これはお世辞だけど。
 ほかの料理もしっかりと美味だった。
 会話を交えながらの食卓は、まるで家族のようだった。不明な点だらけの彼女。でも僕はそこに大きな魅力を感じた。
 
 「僕、こんな人と結婚したいなぁ」

 ぽつりとつぶやいた一言。
 カランと、テーブルの上にスプーンが落ちる音が響く。その間、静寂が訪れた。

 「…ご、ごめんね、告白かと思って、びっくりしちゃって……」
 「あ、ああ、こっちこそごめん」

 そうだ。僕は初対面の女性に何を言っているのだ。これじゃあ、まるでナンパじゃないか。ナンパとか、キャバクラとか、口から出まかせ的なそういうの。
 そうとだけは思われたくない。

 「いや、あの、本心です!」

 ……ん? え、え、え。……え? これ、告白だな。

 ペディさんの顔は、真っ赤になっている。
 辛い物を食べたとか、そういうのではない。本当に『紅潮』という言葉が似合うような、そんな頬の赤らめ方。

 「え、えぇと。う、ええ……」
 
 あんなに元気だったペディさんも、何も言えないほどに混乱している。僕のせいだけど。

 「帰ります!」
 「えぇ……!」