それから仲良くなった翔子ちゃんは、生意気な後輩で、僕の日常を180度変えてくれたんだ。そして翔子ちゃんは僕の『彼女』になった。
そして、あの日は記憶から消したくて消えてほしくない日。
『キス』
公園で、交わしたファーストキス。ファーストキスの味は、直前飲んだレモンソーダ。甘くて酸っぱくて、レモンの味のキスを交わした。
そして、僕は引かれたんだ。帰り道、トラックに。
それが4年前の話。
これだけ記憶が蘇っても、僕の名前だけは思い出せなかった。きっと、僕はもう。
そんな僕に、彼女はずっとずっと、長い時間をかけて。
見る度に初対面の僕に。
苦しかったろうに、悲しかったろうに。
ねえ、ペディさん。もういいよ。そんなに頑張らなくて―――
◇◇◇
夜になった。
僕はテレビを見ている。なんか面白そうな映画をやるみたいだ。【テディベアの贈り物】っていうらしい。今度見に行こうか。
もちろん一緒に行く人なんかいないから一人だけどね。
「すみませーん」
誰だ、なんだろう。こんな遅い時間に。迷惑だな。
僕は玄関までいって、扉を開ける。
扉を開けると、そこには女性がいた。黒髪ロングの、可愛い女性。会社員だろうか。両手には買い物袋が握られている。
「あの、家上げてもらっていいですか」
「ええ、急に。なんでですか?」
初対面なのに図々しい。僕じゃなきゃ追い返していただろう。僕は優しいから、話を聞いてあげるんだよ。
「あ、もしかして訳ありですか?」
「え、あ、まあ。訳ありです!」
元気にそういい放った彼女。初対面なのにめちゃくちゃ距離が近い彼女。けれどこの距離間。なんだか嫌じゃない。むしろ心地いいというか、懐かしいというか。
「じゃあ、入りますねー。おじゃましまーす」
「な、ちょ、ちょ、……えぇ。なんだこれ」
彼女は僕の家に勝手に入り込んだ。
ああ、どうしたものかと、悩みながらテーブルに腰掛ける。
ん、なんだこれ。
そこには一枚の紙が。くしゃくしゃに書き綴られた僕の字。書いた覚えはないが。幽霊かな。
絶対これに従えと、前置きをしてから文は始まっていた。
『これを見ている僕へ
これを読んで訳が分からずとも、これを実行してほしい。
そして、あの日は記憶から消したくて消えてほしくない日。
『キス』
公園で、交わしたファーストキス。ファーストキスの味は、直前飲んだレモンソーダ。甘くて酸っぱくて、レモンの味のキスを交わした。
そして、僕は引かれたんだ。帰り道、トラックに。
それが4年前の話。
これだけ記憶が蘇っても、僕の名前だけは思い出せなかった。きっと、僕はもう。
そんな僕に、彼女はずっとずっと、長い時間をかけて。
見る度に初対面の僕に。
苦しかったろうに、悲しかったろうに。
ねえ、ペディさん。もういいよ。そんなに頑張らなくて―――
◇◇◇
夜になった。
僕はテレビを見ている。なんか面白そうな映画をやるみたいだ。【テディベアの贈り物】っていうらしい。今度見に行こうか。
もちろん一緒に行く人なんかいないから一人だけどね。
「すみませーん」
誰だ、なんだろう。こんな遅い時間に。迷惑だな。
僕は玄関までいって、扉を開ける。
扉を開けると、そこには女性がいた。黒髪ロングの、可愛い女性。会社員だろうか。両手には買い物袋が握られている。
「あの、家上げてもらっていいですか」
「ええ、急に。なんでですか?」
初対面なのに図々しい。僕じゃなきゃ追い返していただろう。僕は優しいから、話を聞いてあげるんだよ。
「あ、もしかして訳ありですか?」
「え、あ、まあ。訳ありです!」
元気にそういい放った彼女。初対面なのにめちゃくちゃ距離が近い彼女。けれどこの距離間。なんだか嫌じゃない。むしろ心地いいというか、懐かしいというか。
「じゃあ、入りますねー。おじゃましまーす」
「な、ちょ、ちょ、……えぇ。なんだこれ」
彼女は僕の家に勝手に入り込んだ。
ああ、どうしたものかと、悩みながらテーブルに腰掛ける。
ん、なんだこれ。
そこには一枚の紙が。くしゃくしゃに書き綴られた僕の字。書いた覚えはないが。幽霊かな。
絶対これに従えと、前置きをしてから文は始まっていた。
『これを見ている僕へ
これを読んで訳が分からずとも、これを実行してほしい。