誰かに助けてもらおうか迷ったけど、わたしには助けてくれる友だちなんかいない。
目の隅で笑っている人たちを捉えて、その方向に顔を向けると、昨日の人たちだった。

「あれれー?笹野さん上履きどうしたの?」

にやにやしながら名前も知らない女子たちが近づいてくる。
わたしはこの状況が恥ずかしくて何も言えずに、唇を噛むことしかできない。

「あっ、そういえばうち、トイレの水で洗っといてあげたから取りに行っておいでよ」

仕方なく下駄箱から1番近いトイレに入ると、トイレの水でびちょびちょになっているわたしの靴があった。
それを取ろうとした瞬間、頭上から滝のように水が降ってきた。

上を見上げると、女子3人でくすくす笑っている。
もう10月だから寒さで凍えそうになる。

「笹野さん汚かったし、丁度いいんじゃない?」

ガハガハと汚い笑いをしながら、持っていたバケツをわたしに向かって投げてその人たちは出ていった。

びちょびちょになった靴を持ってトイレから出ると、歩いている人たちがぎょっとした顔をして見てくる。
制服もびちょびちょになっちゃったし、保健室に行くと、先生もぎょっとした顔で見てくる。

「朝から全身ずぶ濡れの子を2回も見るなんて初めてだわ」
「2回…?」
「そう。今さっきまで居たんだけど、その子も靴と全身がびっしょり濡れていたのよ」

なんとなく見当がつく。
多分昨日虐められていた子だろう。

「その子ってもしかして男の子ですか?」
「うん。もしかしてお友だち?」
「いや、違います」

保健室にあるジャージに着替えて保健室を出ようとしたら止められた。

「授業出るの?休んでもいいのよ?」
「大丈夫です。ジャージありがとうございました」

お辞儀をして保健室を出て教室に入る。
教室に入ると、廊下までがやがやした声が聞こえたのに、しーんと一気に静かになった。
ひそひそと何かを言っている声が耳に入る。

学校にいても、家にいても苦しいだけでわたしの心が休まる場所なんてどこにもない。