お母さんが亡くなって1ヶ月くらい経った頃から、仕事から帰ってくるとお酒を浴びるように飲んでいた。

いくらわたしが止めたとしても、全く聞いてくれないし、毎日のように勉強をしていい大学へ行けと口癖のように言ってくる。

前から勉強は出来ていたほうで、全教科ほとんど90点を取っていたのにお母さんが亡くなってからは、90点ぎりぎりだと怒られるようにもなった。

だからわたしは家も学校も大嫌い。
誰もわたしの気持ちなんかわかる訳がない。

「凛、今日のご飯は?」
「しょうが焼き」

会社で疲れるんだろうけど、少しくらい家事をやってほしい。
どうして洗濯も掃除もご飯も全部わたしがやらないといけないの。
お母さん、帰ってきてよ。

食事中が1番と言っていいほど冷たい空気が部屋を包み込む。

「凛、最近勉強はどうなんだ」

まただよ。
どうしてこんなに勉強ばかり聞いてくるの。

「別に。いつも通りちゃんとやってるよ」

頑張って作ったしょうが焼きも味が全くしない。
勉強のことを聞くなら、料理を褒めてほしかった。
ただ一言『美味しいよ』だけでも嬉しいのに。

「ごちそうさま」

お父さんはそう言って椅子から立ち上がり、食器をシンクに置いて自分の部屋へ行ってしまった。
しょうがなくいつものように食器を洗う。

お母さんがいたときはお手伝いをするのが大好きだった。
お手伝いをすると、お母さんは喜んでくれるし、お父さんもたくさん褒めてくれた。

まさかこんなに早くお母さんがいなくなるなんて、あのときは思いもしなかった。

やることもないし、お風呂に入って早めに寝ることにした。
お風呂から上がるとわたしの冷めきった心と真逆で体はぽかぽかしている。

わたしもお母さんの元へ行こうかなと思いながら眠りについた。