靴を履き替えて外を歩いていると、葉っぱが木から落ちる姿が儚くて今日聞いたピアノを思い出す。

家についても今日はしーんとしていて誰も家にいない。
そう分かると緊張の糸が切れてはぁーっと長いため息が出る。

やっぱり1人が1番いい。

楽だし、誰かに気を使う事もなければ気を使わせることもない。

自分の部屋でごろごろしている時間がどんな時よりも至福の時間だった。

数分後、玄関の扉がガチャっと音を立てながらひねる音がした。

「凛《りん》ただいま」

大嫌いなお父さんが帰ってきてしまった。

いつもより帰りが遅いから、心も軽かったのに一気に重りが落ちてきた。

しょうがなく、下におりるとお父さんは缶ビールをプシュッと開けてる時だった。

「おかえり」

わたしたちはお母さんが亡くなってから、家族図が崩壊した。

お母さんがまだいた時は理想の家族と言われるような家族だった。
お母さんもお父さんも優しくて、休日になるとたくさんの場所へ行った。

でも、ある日お母さんが車と衝突事故に遭った。
あとから聞いたけど、即死だったっぽい。

わたしは当時まだ中学1年生だったけど、死について知っているつもりではいた。

でも現実は想像していたものより遥かに辛く悲しい日々でしかない。

お父さんがいてくれたからまだ何とか持ちこたえられると思ったのに。