家に帰って自分の部屋でぼーっとしていると、電話が鳴る。

電話が鳴るなんて珍しい。

誰だろと思って携帯を見ると、五十嵐くんだった。

最近連絡を交換してよく連絡を取り合っていたのに、電話で話したいことって何だろ。

「もしもし?わたしだけど」
「夜遅くにごめんね、今大丈夫かな?」

「全然大丈夫だけど、どうしたの?」

何だか五十嵐くんの声が震えているような気がして、心配になる。

「ちょっとぼくもう無理みたい」
「え?どういうこと?」

言っている意味がわからなかった。

いや、わかるけどわかろうとしなかったの方が正しい。

「さようなら、凛ちゃん」

泣いている。五十嵐くんが泣いている。
急いで五十嵐くんの元へ行かないと。

玄関を飛び出すと、丁度お父さんが帰ってきたところだった。

腕を掴まれて
「今からどこ行く気だ?勉強しろ」
と言ってきたけど、今はそれどころじゃない。

「離してよ!」

強引にお父さんを押して外へ走り出す。

外に出たところで、五十嵐くんがどこにいるのかもわからない。

よく一緒にいた公園にはいない。
五十嵐くんの家もわからない。

だけど、五十嵐くんが電話かけてきたところは家ではないと思う。

少し風の吹くような音が聞こえたから。
賭けで、学校に行くことにした。

その間もずっと走り続けていたから横っ腹が痛くて、息もあがって苦しい。

お腹が引きちぎれそうだ。

でもこんなことで、走る速度を落とすわけにもいかない。