「2年連続でピアノ大人の部門で最優秀賞とのことですが、どういうお気持ちかお聞きしたいのですが」

たくさんの人が押し寄せてくる。

でも今は質問に答えてる場合じゃない。
今は一刻でも早く君の元へ行かないと。

質問を無視してトロフィーや賞状はあとで貰うと関係者に伝えて、走り始める。

重いドレスに履きなれないヒールは最悪。
ホールを出てすぐのところに1台の車が停まっている。

「凛《りん》ちゃん!早く乗って」

記者の人たちはわたしが乗り込んだ車がホールから走り去ると、落胆の表情を浮かべてホールの中へとまた戻っていった。

「五十嵐《いがらし》さんありがとうございます。助かりました」

「何言ってるの。出来ることなら何でもするから」

車を走らせて10分くらいで目的地に着いた。
五十嵐さんと車から一緒に下りて君が眠っているお墓の前に辿り着いた。
君のところにくるまで随分かかっちゃったね。

「凛ちゃん、ありがとう。響姫《ひびき》喜んでると思う」

五十嵐さんは目に涙を浮かべて微笑む。
「そうだと嬉しいです」