扉が開くと、身長の高い男子3人が扉の前に立っている。
「あれぇ?五十嵐くん彼女作ってんの?」
「うわ、ホントだわ」
「しかもこの女あれじゃね?学年トップの笹野」
身長が高いせいで怖い。
しかもにやにやしながら近づいてくる。
「笹野さんは帰りなよ。お父さんが心配するよ」
「でも…君は?」
「ぼくのことは気にしないで」
こんなときでも君は下手な作り笑いをするんだね。
優しすぎるよ。
「おいおい。俺らが遊びに来てやったのにかっこつけてんじゃねぇーよ」
そう言って五十嵐くんをぼこぼこ殴り始めた。
3人で1人をいじめるなんてどうかしている。
助けになりたい。
でも、わたしにできることなんかない。
それでも、人生最大と言ってもいい程の勇気を振り絞って止めに入った。
「3人で1人をいじめるなんてどうかしてるよ。君たち3人よりよっぽど五十嵐くんの方がかっこよくて魅力的だよ」
声も体も面白いほど震えている。
「あぁ?じゃあお前も仲間に入れてやるよ」
拳を振りかぶって近づいてきた。
何故かわたしは冷静で、あぁ、殴られるんだなってぼーっと思っていると、
「笹野さん!」
わたしが殴られそうになったところで、五十嵐くんがわたしに覆いかぶさってきた。
さらに五十嵐くんは蹴られたり殴られたりぼろぼろになった。
「ここらへんでやめとくか。じゃあな、五十嵐くん」
そして音楽室はしーんと静まり返った。
「笹野さん、大丈夫?」
「どうしてわたしを庇ったの!君を助けたかったのに」
「助けてもらったよ。声も体も震えながら立ち向かってくれたこと、ぼくは嬉しかった。さぁ、帰ろう」
涙がぽろぽろこぼれ落ちる。
この涙は冷たくもあり、温かい涙だった。