そしてわたしは家を出た。
まだ家を出るには早すぎるけど、昨日みたいに言い合いになるのが嫌だから顔も見たくない。

外に出ると、太陽が出てて体がぽかぽかする。

学校に行く時間になるまでどうしよう。

ご飯を食べていないから、コンビニに行くことにした。
コンビニでおにぎりを2つとお茶を買って、近くの公園にあるベンチに座った。

ベンチに座るとひんやりしていて冷たい。

おにぎりを1口食べると中からたくさんの昆布が出てくる。
久しぶりにコンビニのおにぎりを食べた。

お母さんは元からあまりコンビニに行くような人じゃなかったから、初めてコンビニ弁当を食べたときは味が濃すぎて驚いた。

でもおにぎりは意外と塩っ気も丁度良くて美味しい。

「あ!笹野さんじゃん!」

目の前にはピアノ少年が立っていた。

「おはよ」
「おはよう!こんな朝から外でおにぎりなんてどうしたの?」

やっぱり周りから見てもおかしいよね。

「ちょっと家に居づらくて」

「そっかぁ。そういうときあるよね。やっぱり高校3年生だし、僕も進路のことで親がうるさいよ」
「どの家も同じなんだね」

「でも笹野さんは頭いいしどこにも行けるじゃん!僕勉強できないから羨ましいよ」

頭がよくても誰も褒めてなんかくれない。
褒めるどころか国公立の大学に行けってお父さんから言われる。

テストで全て90点以上じゃないと怒られて、それなのに家事は全部わたし任せだし、お母さんはいないし。
そんなわたしが羨ましいなら変わってよ。

「笹野さん?どうかしたの?」

「…あぁ。何でもない。そろそろわたし学校行くね。またあとで」

ピアノ少年は何か言いたそうな顔でわたしを見てくる。
でも、ここにいると関係ないピアノ少年に苛ついて当たっちゃいそうになるから走って学校へ向かった。

学校に着いて程なくして先生が教室に入ってきた。
1時間目は1番苦手な数学だった。

いつものように問題を解いているけど、自信がない。

やばい。このままじゃ90点以下になっちゃう。
そのあとの英語と物理もわからないところが多すぎて、わたしは不安や悩みが消えなかった。

何日かに分けてテストを行うから今日は3時間で下校だった。

帰ろうと思ったけど、昨日ピアノ少年と約束したし音楽室に向かうことにした。
ちらっと中を覗くとやっぱりいた。