「お父さん、お母さん早く!」
「凛、そんなに走ると転ぶよ」

あぁ、これは夢だ。なんとなく分かる。

「わたしあれ乗りたい」

夢の中の小さなわたしは観覧車を指していた。

「じゃあ、あれに乗って帰ろうか」

そう言ってお父さんとお母さんはわたしの手を握ってくれた。
とても温かくて大きな手だった。

「うわぁ!さっきまでいたところが小さくなってくよ!」

夢のわたしは目を輝かせながら、外を眺めている。
観覧車はあっという間に終わって帰る時間となった。

「じゃあお母さんは帰るね。凛もお父さんの言うこと聞くのよ」

「お母さんも同じ家でしょ?」
「ううん。凛たちとは違うところに帰らないと」

お母さんはわたしの頭を撫でて歩き始めた。

「お母さん行かないでよ!」