放課後、いつものように図書館に行こうと思ったけど今日は足が違うところに向かう。
今日もピアノ弾くのかな。
小さな期待を胸に閉まって音楽室に向かった。
すると、またあの優しい音色が聞こえてくる。
昨日とは違う楽曲のようだった。
廊下にしゃがんで聴いていると、ピアノの音が止まる。
不思議に思ったけど、待っていたら目の前の扉が開いた。
やばい、聴いているのがばれた。
走り出そうとしたところを止められた。
「待って!」
止まって振り返ると、そこにいたのはやっぱり虐められていた男の子だった。
何も言えずに俯いていると、その人が口を開いた。
「ぼくがピアノ弾いているのどうだった?女子みたいで気持ち悪い?」
「そ、そんなことない!感情が音となって凄い魅力的だった」
「本当に!?嬉しい!」
その人はその場で小さく飛び跳ねている。
「君はピアノが特技なの?」
「うん!僕が唯一自由に表現できる場なんだ。」
目の前にいる人がいつもいじめられているような人には見えなかった。
それほどピアノの前では強く堂々としていられるんだろう。
「笹野さんは?自由になれる場とかある?」
「ううん。わたしにはそんなのない」
「じゃあ今日から放課後だけ一緒に話そうよ。落ち着ける場にできないかな?」
急な提案に開いた口が塞がらない。
でも、暇をつぶせるなら悪くないかも。
「うん。いいよ」