岩崎に対し深々と頭を下げ礼を言うと、杏奈は遥翔の運転する車で事務所を後にした。

杏奈の住むアパートに向かう車中、杏奈は遥翔に一つの疑問を投げかけた。

「ねえ遥翔さん今日お仕事は? 島で初めて会った時はマネージャーさんが休みをくれないって言っていたじゃないですか」

「あぁそれね、あの一件以来マネージャーも考えてくれて結構オフを入れてくれるようになったんだ、その代りマネージャーが大変みたいだけどね。それでそのオフがたまたま今日だったんだ。だから社長に言って急いでオーディションのセッティングをしてもらったんだよ」

「そうなんですか、なんか責任重大って感じです」

「どうして?」

「だってあんなにたくさんの人達があたし一人の為に動いてくれて、それでもしオーディションに落ちたら申し訳ないなって」

小さな声で囁くように言いながら不安な表情をのぞかせる杏奈。

「大丈夫、杏奈ちゃんが心配する必要ないよ、問題ないって。杏奈ちゃんなら受かるよ」

「そうかなぁ?」

「自信持って。社長にも言われたでしょ、自信持つようにって」

「はい、ありがとうございます! そうですよね、もっと自分に自信持たないといけないんですよね」