二日後、外来が休みの日曜日に計画を決行する事になった。

談話室に飾りつけをし杏奈の為にウエディングドレスを用意すると、牧師役には最初の主治医であった渡辺医師にお願いする事になった。

遥翔が車いすに乗って華やかに飾り付けられた談話室で牧師の前で待っていると、きれいな純白のウエディングドレスを身にまとった杏奈が父親の直樹と共に入って来た。

そんな即席のバージンロードを歩く杏奈の瞳には早くもきらりと光るものがあった。

こうして病院での結婚式を執り行っていると、その噂を聞きつけた他の患者やその家族たちがやってきて共に祝ってくれるようになり、ささやかだったはずの結婚式が徐々に盛大なものへとなっていく。

その後無事に結婚式を終え病室に戻ると、遥翔が杏奈に対しある頼み事をしてきた。

「なぁ杏奈、久しぶりにあの月が見たいなぁ」

「じゃあまた写真撮ってきてあげるね」

「そうじゃなくて本物の月が見たいんだ、写真じゃなくて実物が」

「そんなのダメよ」

「頼むよ、今日は調子良さそうだし屋上まで連れてってくれないか?」