☆☆☆

それから30分ほど経過したとき、舞は青っちのアパートの部屋にいた。


「母親はまだ帰ってこないから」


という青っちに連れられてここまで来たのだ。


普段なら彼氏でもない男の部屋に上がるなんてと躊躇したはずだけれど、泣きじゃくっていたときの舞はここまで来た記憶がほとんどなかった。


「ごめんね。近所の人とかに噂されない?」


どうにか泣き止んだ舞が青っちにそう聞くと「噂なんて言わせたいやつに言わせておけばいいんだ」と、青っちは白い歯をのぞかせて笑った。


そんな青っちにつられて笑顔になる。


切れた口の中が少し痛かったけれど、それほど気にならなかった。


「それで、あんなところで何してた?」


青っちにシャワーを貸してもらい、汚れた制服は洗濯機に入れて、代わりに青っちの体操着を着させてもらっていた。


おまけにテーブルの上にはあたたかいココアまで用意されている。


気の利く青っちに思わず笑ってしまいそうになる。


「……呼び出されたの」


「誰に?」


「クラスメート。ごめんね青っち、私今クラスでイジメられているの」