「大丈夫だよ……」


舞は恵美の視線に耐えきれずに震える声でそう返事をした。


これを書いた犯人が恵美たちであると、見た瞬間からわかっていた。


自分たちでラクガキをしておいてわざと声をかけて来ているのだ。


舞はうつむいて下唇を噛み締めた。


わかっているのに何も言えない自分が情けない。


高校2年生にもなってこんな風に黙り込むことしかできないなんて。


「でもこれって本当のことしか書かれてないし、仕方ないよねぇ?」


淳子が楽しげな声で言うと、愛が同意するように大きな声で笑う。


恵美はジッと舞の反応を伺って、その顔には笑みが張り付いていた。


舞は苦笑いを浮かべて自分の足で雑巾を取りに行った。


犯人は目の前にいるのになにもできない。


笑われていることしかできない。


情けなさや悲しさ、悔しさが一つになって心の奥から襲いかかってくる。