「外出許可は取れるんでしょう?」


「あぁ。まぁ一応は」


言いながらも青っちはどこか歯切れが良くない。


舞から視線を外して、その視線を空中にさまよわせている。


「もしかして、先生からなにか言われた?」


「いや、そうじゃないんだけど。最近リハビリをしていても、コケることが多くなったんだ」


青っちは一旦深呼吸を挟んでからそう言った。


舞は一瞬絶句してしまい、みんなの会話も止まる。


外から入ってくる蝉の鳴き声だけが、やけに軽快な音楽のように聞こえてくる。


「そっか。それなら車椅子とかあったほうがいいね」


舞は明るい声色で答えた。


不安なのは青っちの方だ。


自分が暗い顔をしていれば、青っちは余計に不安になっていく。


だから笑顔になった。


「そうだな」


「それならやっぱり水族館だな!」


「英介はさっきからそればっかり、自分が行きたいんじゃないの?」


恵美に突っ込まれて英介が慌てて左右に首をふる。


その様子を青っちは笑って見ていた。


青っちがもうほとんど自力では歩けないなんて、想像もつかなかった。