今青っちは苦しんでいる。


すぐに駆けつけて、今までと同じように手を握りしめてあげたい。


だけど、体のほとんどが透けていたら?


青っちが見えなくなっていて、ベッドの膨らみだけが見えたらどうするの?


そう考えると怖くなってこれ以上動くことができなくなった。


「青木さん大丈夫ですよ。深呼吸をして、落ち着いて」


そんな声が聞こえてくる病室から、舞は一歩後退して後ずさった。


中ではまだ青っちへの処置が続いている。


それが終われば青っちに会うことができる。


自分の声かけが青っちを元気にするかもしれない。


頭ではわかっているのに、体は向きを変えていた。


そして逃げるように来た道を戻り始める。


エスカレーターを待っている間も、舞は1度も青っちの病室の方を振り返らなかったのだった。