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いつ、どうやって家に戻ってきたのか覚えていなかった。


とても1人でバスに乗ることはできなかっただろうから、青っちの両親が車で送ってくれたのかもしれない。


「私、ちゃんとお礼を言ってないかも」


家まで送り届けてもらえたのにそれは無礼だ。


そんなことよりももっと大切なことがあるのに、舞の頭の中で最初にひっかかったのはそのことだった。


人間、あまりにショックなことがあると、そこから逃げて別のことを考えたくなるのかもしれない。


それから舞はフラフラと立ち上がり、ようやく着替えを始めた。


制服のままでずっと座り込んでいたから、スカートはシワだらけだ。


「夕飯、作らないと」


それに洗濯物も干しっぱなしだ。


お風呂は洗ったんだっけ?


必死で日常に戻ろうとするが、うまく行かない。


玄関の鍵が開けるられる音を聞いて、鍵だけはちゃんと閉めたのだと思い当たった。