あの日、「君、人生楽しい?」と、君は言った。
 悪気もなくただ普通に言い放った。周りも気にしないような声だった。
 僕はクラスの窓側で一番後ろの席で問いかけられていた。正確には馬鹿にされているといった方がいいのだろうか。目の前に立つ彼女はそんなつもりはないいのだろうけど。
 周りには目立つ女子のグループが話していて静かな雨が降ってる音がする。クラスの空気は楽しそうで僕とこの彼女だけが違う空間に投げ出されたような感覚だった。
 普通だよ。と返すと紙を僕の机において教室から出て行ってしまう。紙には、
『私は喜多見(きたみ)愛純(あすみ)。卒業式に死にます。』
と書かれていた。