いつからだろう無口で無愛想な君を目で追ってしまうようになったのは。いつからだろう君の笑顔を見たいと思うようになったのは。そんなことを考えながらいつもの帰り道を歩いていた。

「ただいまー!」
「おかえりなさい杏。今日は杏の好きな物いっぱい作ったからね」
「やったー!ありがとう!お母さん」

今日は私中本杏《なかもとあんず》の17歳の誕生日だ。カバンをリビングに置いて洗面所に向かう。手洗いうがいをきちんと済ませ、鏡を見る。誕生日なのに少し暗い顔をしているのはきっと太陽君に誕生日を祝ってもらえなかったからだ。いっぱい友達から祝ってもらえたし私は幸せ者だと首を振り考え直した。晩ご飯の良い匂いがする。お腹がグゥーと鳴った。早く席に着かなければ。

 晩ご飯は私の大好物ばかりでとても美味しかった。お皿が洗い終わり待ちに待った誕生日ケーキのお出ましだ。私の好きなふわふわのクリームがいっぱい乗ったショートケーキをホールで買ってくれた両親には感謝しかない。

「杏、俺から誕生日だ。受け取ってくれ」
「腕時計かな?ありがとう!」

少し変わった見た目の腕時計だった。最近流行りのApple Watchに近い見た目をしている。