安西さんと連絡先を交換して、1週間。
学校に行く前と、帰宅してからのタイミングでメッセージをやり取りするようになった。

『きょうは、どうだった?』
『久しぶりに部活に行ったよ』
『藤田くん部活やってたの!?笑』
『やってるわ!笑 ちなみに、映画部』
『えー意外だ! どんな映画が好き?』
『色々観るけど、邦画の方が好きかな〜』
『わたしもー!いま公開中の、花火職人のやつとか気になってる』
『ああ、あれ!面白そうだよね』

じゃあさ、今度の週末に見に行こうよ。

…喉元まで出かかった気持ちを文字にしても、送信ボタンは押せなかった。

屋上で、あんなに波長が合うのかと感動した彼女と同じ映画を観たらきっと楽しいだろう。
でも、まだ1回会ったっきりで映画に誘うなんて、迷惑野郎にならないだろうか。
そんな、自信の無さが足を引っ張る。

『いっそ、本物の花火見ようよ!』

彼女からのまさかの提案。
1回しか会ってないのに花火?!
なかなかハードル高くないか。相手は俺で良いのか。
彼女のことだから、ふっと思いついたままにメッセージを送ってきたんだろう。
鼻歌でも歌いながら、スマホをいじる姿が何となく想像できる。

既読をつけてからあんまり待たせると悩んでいるように思われる気がして、すぐに返事を打つ。
悩むまでもない。

『いいね!見に行こう』