絵を描きたくなったことが自分でも謎に感じているとはいえ、描きたくなってしまったことに関しては本当なので、僕はスマホを見て、今までの美堀さんが書いた記事を読んでいた。
大水槽の上部まで見えるところにある、背もたれのない二人がけのソファに、僕と美堀さんは座っていた。
記事を遡っていくと、少し不思議な気持ち。
まるで自分の絵が、遡られてるような気が、少しだけするのだ。
その少しだけが気になって、考え込むと、その理由はわかった。
ああ、そういうことか。
でも、これは、なぜなんだろう。
わからないし、たまたまの事かもしれない。
だけど……。
美堀さんとは昨日……初めて出会った時、あえて僕の隣に座ったのかもしれないと思った。
「先輩……? 結構考え込んでますかね」
「ああ、うんそうかも」
「あのー、先輩、先輩の絵……」
「今まで結構見てくれてたんだね、美堀さん」
「……はい」
ウツボが珍しく水槽の上のほうまできていて、それを美堀さんも僕も眺めていた。ふとウツボは脱力し、また水槽の底の方へと行った。
それと共に、美堀さんも、僕も力を抜いた。
だから美堀さんは、話し始めてくれたのかもしれない。
ちょうど美堀さんが、観光発信部に一人だけ残ることになってしまった時のこと、そして最初に、一人で活動した時のこと。
✰ ○ ✰
私以外の部員が辞めることになった観光発信部。
私は困っていたけど、でももっと、悔しくもあった。
なんかみんな暇潰しというか、何らかの部活はやっといたほうがいいかなとか、そんなノリだった。
だから私が真面目に活動したいと言った時、みんな観光発信部を去る気持ちが芽生えたんだと思う。
もっと前の先輩から続いている観光発信部の記事の更新は途絶えていた。
それを復活させたいのに。
みんな活動しないでゆっくりするのが一番したいことだったから、誰も協力してくれなくて。
やっぱり私は、中学の時と同じで。
ぼっちで誰も好きな友達も恋してる人もいなくて。
なんかいるだけで寂しがりやが周りに発散されてそうな、そんな感じ。
せっかく楽しそうな内容の活動の部活を見つけて入ったのになあ……。
なんか全部下手。下手な私。
でも私はここでやめたらダメだと思った。
ひとりぼっちでもやる。それは中学の頃からのポリシーみたいなものだ。
私は、もともと行きたいと思っていた、市の展覧会を記事のネタにすることにした。
市の展覧会をぶらぶらして、写真撮れるところは撮って、そしてまたもう一周した。
「へー、これは水族館の絵か……」
そう思った私は、その絵も写真に撮った。
そして題名を見てみる。あれこの水族館、近くにある水族館の名前だ。
へー、こんな感じなんだ。
次の記事のネタにしようかな。
私はそう決めた。
そしてまたしばらく経って、次の市の展覧会がやってきた。
うーん。また同じような記事になりそうだなあ。集まってる作品が違うとはいえ。
そう考えながらまたゆっくりと絵を見て回っていた私は、なんとなく水族館の絵と同じ雰囲気の絵を見つけた。
あ、やっぱり、おんなじ人が描いてる。
書いた人の名前を見た私は思った。
今回の絵は、屋台が出ている公園の絵だった。
へー、あ、この公園、市民ホールの裏の公園じゃないかな。
調べてみれば、まだギリギリ屋台のイベントがやっている時期だった。
今度の記事のネタ、これにしよう。またこの人の絵に影響されてしまった。
それにしても、この人の絵は必ず、この辺の実在する場所の絵なのかな。
そうだったら、他にどんな絵を描いてるのか、知りたいな。
私はそう思った。
それに、この人……一緒に話したら、楽しそうだな。
会ったこともないのにそういうことを考えてしまうのが、ぼっちな私特有な気がした。
大水槽の上部まで見えるところにある、背もたれのない二人がけのソファに、僕と美堀さんは座っていた。
記事を遡っていくと、少し不思議な気持ち。
まるで自分の絵が、遡られてるような気が、少しだけするのだ。
その少しだけが気になって、考え込むと、その理由はわかった。
ああ、そういうことか。
でも、これは、なぜなんだろう。
わからないし、たまたまの事かもしれない。
だけど……。
美堀さんとは昨日……初めて出会った時、あえて僕の隣に座ったのかもしれないと思った。
「先輩……? 結構考え込んでますかね」
「ああ、うんそうかも」
「あのー、先輩、先輩の絵……」
「今まで結構見てくれてたんだね、美堀さん」
「……はい」
ウツボが珍しく水槽の上のほうまできていて、それを美堀さんも僕も眺めていた。ふとウツボは脱力し、また水槽の底の方へと行った。
それと共に、美堀さんも、僕も力を抜いた。
だから美堀さんは、話し始めてくれたのかもしれない。
ちょうど美堀さんが、観光発信部に一人だけ残ることになってしまった時のこと、そして最初に、一人で活動した時のこと。
✰ ○ ✰
私以外の部員が辞めることになった観光発信部。
私は困っていたけど、でももっと、悔しくもあった。
なんかみんな暇潰しというか、何らかの部活はやっといたほうがいいかなとか、そんなノリだった。
だから私が真面目に活動したいと言った時、みんな観光発信部を去る気持ちが芽生えたんだと思う。
もっと前の先輩から続いている観光発信部の記事の更新は途絶えていた。
それを復活させたいのに。
みんな活動しないでゆっくりするのが一番したいことだったから、誰も協力してくれなくて。
やっぱり私は、中学の時と同じで。
ぼっちで誰も好きな友達も恋してる人もいなくて。
なんかいるだけで寂しがりやが周りに発散されてそうな、そんな感じ。
せっかく楽しそうな内容の活動の部活を見つけて入ったのになあ……。
なんか全部下手。下手な私。
でも私はここでやめたらダメだと思った。
ひとりぼっちでもやる。それは中学の頃からのポリシーみたいなものだ。
私は、もともと行きたいと思っていた、市の展覧会を記事のネタにすることにした。
市の展覧会をぶらぶらして、写真撮れるところは撮って、そしてまたもう一周した。
「へー、これは水族館の絵か……」
そう思った私は、その絵も写真に撮った。
そして題名を見てみる。あれこの水族館、近くにある水族館の名前だ。
へー、こんな感じなんだ。
次の記事のネタにしようかな。
私はそう決めた。
そしてまたしばらく経って、次の市の展覧会がやってきた。
うーん。また同じような記事になりそうだなあ。集まってる作品が違うとはいえ。
そう考えながらまたゆっくりと絵を見て回っていた私は、なんとなく水族館の絵と同じ雰囲気の絵を見つけた。
あ、やっぱり、おんなじ人が描いてる。
書いた人の名前を見た私は思った。
今回の絵は、屋台が出ている公園の絵だった。
へー、あ、この公園、市民ホールの裏の公園じゃないかな。
調べてみれば、まだギリギリ屋台のイベントがやっている時期だった。
今度の記事のネタ、これにしよう。またこの人の絵に影響されてしまった。
それにしても、この人の絵は必ず、この辺の実在する場所の絵なのかな。
そうだったら、他にどんな絵を描いてるのか、知りたいな。
私はそう思った。
それに、この人……一緒に話したら、楽しそうだな。
会ったこともないのにそういうことを考えてしまうのが、ぼっちな私特有な気がした。