そっと唇を離すと、真っ赤になった彼女の顔があって、俺は我に返った。


「ご、ごごごめんっ!!」


慌てて謝り、頭を下げた拍子にフェンスにおでこをぶつけてしまう。


「ほ、本当に、悪気があったワケじゃなくて、なんか、その、つい……」


しどろもどろになっていると、彼女は赤い顔をしたままクスッと小さく笑った。


え……?


「気にしないで下さい」


「あ……えっと……」


「それじゃ、また夜中」


彼女はそれだけ言うと、俺に背中を向けて行ってしまった。


その背中に声をかけることもできず、俺は1人でその場に立ち尽くしていたのだった――。