「別に、『見た』なんて言ってねぇだろ」


必死で冷静さを装ってみても、その笑顔が逆にぎこちなかったみたいで、更にヒロシの笑いの坪にはまってしまった。


体をくの字にまげてヒーヒー言っているヒロシをぶん殴ってやろうかと思った時――。


「いると思うよ、幽霊」


と、突然顔を上げて真剣な表情をして言った。


「え……?」


「特に、ここって病院じゃん? 夜中になると霊安室から誰かがスーッと壁をすりぬけて出てきたり――」


「や、やっぱり、そういう事ってあると思うか?」


食いついて聞くと、ヒロシは二度、大きく頷いた。


俺はゴクリと唾を飲み込む。


「じ……実はな、俺昨日見たんだ!」


「み……見た?」


「あぁ、白いワンピース着た女がさ渡り廊下の向こうにいたんだよ」