時が流れるのは早く、もう三週間が経った。
 高峰先輩は完璧に化け、特訓中の一対一では、私の黒星が多くなり始めている。だが、それと同時に、先輩の怪我も酷くなっていった。
 練習着で隠れてはいるが、青あざが所々に見えるし、切り傷や擦り傷のような生傷も絶えない。考えて、考えて、考えて、何度も問い詰めたが、答えはいつもはぐらかされる。


「本当に、なにもないんですよね?」

「信用ないな~。大丈夫だよ、信じて」


 添えられるように飾られた、笑顔にサムズアップ。最初に会った時にもやっていた、高峰先輩の十八番。
 こっちが心配しているのに、なんなんだそれは。絶対なにかあったはずなのに、なにも話してくれない。
 分からない。
 先輩にとって、私は一体、どういう存在なんだろう?
 悩んでも、悩んでも、分からないことだけが増えていく。