春、気持ちを新たに、私は高校の門をくぐった。
 女子バスケットボールの全国大会常連高校、明王(みょうおう)学園にスカウトされはや数ヶ月。中学卒業から入学までの期間も練習を怠った事はないし、体調管理もしっかりして、万全の状態に整えた。


 絶対に、最初の練習で実力を見せて、ユニフォームを捥ぎ取ってみせる。熱く燃やした闘志を胸に、放課後までの時を過ごす。
 入学式も、短めなホームルームも終わった教室では、クラスメイトがワチャワチャと騒いでいた。
 体育館に急ぎたい私は、我関せずの精神で通り抜けようとするが、一人のクラスメイトが声をかけて引き留める。


「待ってよ、テンヤマさん! みんなで遊びに行こうと思ってるんだけどさ! この後、暇だったら遊びに――」

「すいませんが、暇はありません。あと、私の名前は天山(てんざん)です。天山籠守(こもり)。以後、間違えないでください」


 突き放すようにそう言って、私は教室から出た。
 私はバスケをするためにこの学校に来たんだから、付き合いは必要最低限に。部活のメンバーと上手くやれれば問題ない。自分にそう言い聞かせて、体育館へと走る。
 先んじて貰った連絡では、部活が始まるのは一時かららしいが、今の時刻は……十二時を少し過ぎたあたりだ。


「軽食を体育館で済ませれば……ウォーミングアップくらいできるかな?」


 初見のイメージが一番大事だから、最高の自分をみせたい。だけど、特別なことをやるつもりはない。いつも通りのアップメニューをやるだけだ。


「……着いた」


 そう、無意識に一言呟いて、足を止める。
 なんでだろう、普通のシャトルドアの筈なのに、他にないくらいの威圧感がある。緊張で強張る身体を解すように、一度深呼吸をしてから、ゆっくりとドアを引いて中に入った。


「失礼します!」


 バスケットコート三面分はある、広い体育館の奥まで届くくらい大きな声で、頭を下げて挨拶をする。誰も居ないとは思うが、こういう挨拶は礼儀として大事だ。
 会心の挨拶が出来て気分が良かった私は、頭を上げたが――目に映りこんだのは誰も居ないだだっ広い体育館ではなく、ブンブンと手を振りながらこちらに走ってくる背の高い女性だった。長めの茶髪を一本に纏めて、端正な顔立ちを笑顔で崩している。バスケットシューズを履いて、薄手の練習着を着ている感じからして部員だろうか?


 モップを持っている所を見るに、掃除でもしていたんだろうけど……。それにしては、他に誰も見当たらない。


「待ってたよー!! 先生が言ってた通り一番に来たね?」

「……入部予定の天山籠守です。よろしくお願いします」

「わわっ、丁寧にどうも! 二年の高峰(たかみね)小球(こだま)だよ。こちらこそよろしく」


 高峰小球、そう名乗った先輩は、屈託のない笑顔を私に向けて、力強く手を握ってきた。距離感がおかしいことをツッコミたいが、それ以上に聞きたいことがある。
 何故、先輩は一人で掃除などしているのか?
 普通、部活で使うなら下級生が掃除するのは当たり前だが、もう少し纏まった人数でやるはずだ。こんなに広い体育館なら尚更。


「高峰先輩。失礼だと思いますが、お一人で掃除しているんですか?」

「え? そう、だけど? それがどうかした?」

「――はぁ。いえ、なんでもありません。中学では、部活が終わってから掃除をしていたものですら。……掃除、私もやります。時間が掛かってはウォーミングアップも出来ませんし」


 首を傾げる先輩に対し、私は呆れにも似た感情を、溜息と言葉、合わせて吐き出す。なんとも言えない微妙な表情の私は、体育館の奥にあるステージに適当に荷物を置き、先輩から教えてもらった用具室からモップを一本取って戻った。
 掃除中、高峰先輩は嬉しそうに瞳をキラキラさせながら、聞いてもないことを色々話してくれる。最初は部活のことで、普段の練習ではなにをやっているとか、自分のポジションだとか。


 正直、無言が続くのは嫌だったので助かるが、話が続くにつれ、女子高生らしい話題が増えてくる。美味しいケーキ屋さんが近くにあるやら、上級生の○○先輩には気をつけろやら、どうでもいい話だ。
 そういう話は適当に聞き流す。


「いやー、二人だと早く終わったね~。助かっちゃったよ! ありがとね」

「お礼を言われることをした覚えはありません」


 笑顔でサムズアップする高峰先輩に、私は思ったまま返した。同情したからやったんだ。手伝ったつもりはない。


「でも、助かったのは事実だし……。そうだ! 購買に美味しいデザートが――」

「結構です」


 少し食い気味に、被せるように言ってしまった所為か、先輩はしょんぼりと肩を落とした。明らかに私が悪いのだが、しょうがないじゃないか。
 あのまま、やんわりと断った所でこの人は引かない。付き合いは短いが、先輩から滲み出る善人オーラがそう言っている。
 けど、どうしてもお礼がしたいなら……。


一対一(one on one)、やりましょう。それが、お礼ってことで」

「ほ、本当にそんなことで良いの?」

「今の自分の実力がどのくらいか試したいんです。先輩に相手をしてもらえるなら有り難いのですが……ダメでしょうか?」

「ううん、全然大丈夫!! そうと決まれば、籠守ちゃんは部室で着替えとか済ませてきなよ。私はその間に軽くアップやってるから!」


 善は急げ、そう言わんばかりに、先輩は私を部室に案内した。流石と言うべきか、当たり前と言うべきか、部室内は広い。荷物を置くためのロッカーにドリンクを冷やすための冷蔵庫、バスケットコートが描かれたホワイトボードに、映像を見るためのモニターとレコーダー、まさに至れり尽くせりだ。
 私は、それらをチラチラ見ながらも、途中で回収した荷物から、軽食のゼリー飲料を取り出し啜る。基本、時間が無いときはいつもこれだ。親には、「そんな粗食ばかりだから背が伸びないのよ!」と、言われたがもう気にしていない。


 成長期は過ぎ去ったのだ、ここから伸びることは殆どないだろう。もっとも、身長が百五十そこらで、高校バスケのポイントガードが出来るかも問題だが、そこに関してはそれ程心配していない。
 それよりも、高峰先輩は大きかった。もう、色々と大きかった。バスケットシューズのような底厚靴を履いていなくても、優に百八十近くはあるはずだ。先輩は誰もが羨む天性の才を持っているし、部活に一年間ちゃんと残っている。推測だが、生半可な実力じゃないことは確か。
 相手にとって不足はない。


「バシッと勝って、調子上げないと」


 制服を脱ぎ、着慣れた真っ白い練習着に身を包み、履き続けて柔らかくなりつつあるバスケットシューズに足を通す。仕上げに両頬叩いて気合を入れれば完璧だ。
 飲み干したゼリー飲料をバッグと共にロッカーに押し込み、私は先輩が待っている体育館に向かった。それ程時間を掛けたつもりはなかったのだが、先輩はすでにウォーミングアップを終えたらしく、ボール籠を出して来てシュート練習に移っている。誘った側として、後輩として、待たせる訳にもいかないので、ウォーミングアップをテキパキと済ませ、体を温める。


 春先の昼ということもあってか、すぐに体は温まり、かいた汗がじんわりと服にしみる。もう十分だろう、そう考えた私は、暇を潰すようにシュートを打っていた高峰先輩に声をかける。


「お待たせしました…。もう、始めて大丈夫です」

「水分は? 平気かな?」

「お構いなく」

「……そっか。じゃあ、やろうか」


 その言葉を合図に、私と先輩との初めての一対一が始まった。先行は私、三本先取で勝利。一本取ったら攻守は交代、連続はなし。適当なルールを定めて行われたゲームは――悲しいくらい呆気なく終わった。
 まず最初に、どちらが勝ったかというと、勝者は私。先輩の敗因であり私の勝因は、一言で表すと、圧倒的な『実力差』。無論、先輩は下手ではなかった。この学校に来ているだけあって、上手い……上手いが、そこまでだ。ただ、上手いだけ。基礎は完璧、応用がダメなのだ。自分の長所を全く生かせてない――ただの短所にしてしまっている。


 体格差があるのに押し込んでこないし、意味の分からない所でミドルシュートやロングシュートを打とうとする。ドリブルだって、力強くできているのに腰をあまり落としてないし……。挙句の果てには、彼女は負けた後、眩しいほどの笑顔でこう言ったのだ。


「ありがとう、籠守ちゃん! 良い勉強になったよ」

「――どういたしまして」


 込み上げてくる怒りをなんとか抑え込み、愛想笑いを浮かべて返した。
 理解できなかった。いや、理解したくなかった。
 私がどれだけ望んでも手に入らなかった、天性の才――体格(サイズ)という何物にも代えられないアドバンテージがあるのに、先輩はただ楽しんでいただけなのだ。本気じゃない。もし、本気だったなら、私に負けたのにあんな笑顔にはなれない。悔しいという感情が溢れ出さなきゃ、嘘なんだ。
 なのに、なのに先輩は……。


「高峰先輩、バスケ好きですか?」

「ん? そりゃあ好きだよ。好きじゃなかったら、こんな高校でバスケ部には入ってないし」

「なら……今より強くなりたくありませんか? 勝てた方が、もっと楽しいですよ?」

「……まぁ、なれるならなりたいけど、そう簡単には――」

「なれますよ、先輩なら。素質は十分にありますし、身長という武器もありますから」

 断言した。断言できる要素はあったから。
 伸びしろはあるし、マンツーマンで教えられれば、高峰先輩は必ず化ける。それに……これもなにかの縁かもしれない。
 今後は部活動の仲間としてやっていく訳だし、見る度にイライラするなんて御免だ。
 手助けじゃない、あくまで自分の為。


「放課後から特訓しましょう!!」

「ほ、放課後から!?」

「返事は!」

「は、はいっ!」


 高峰先輩の力強い返事が、体育館に響いた。放課後から特訓を始めることを決め、部活を流すように過ごした。出来る限りのアピールはしたけど……印象は薄まってしまったかもしれない。最悪だ、幾らスカウトされたからって、確実にレギュラーとは限らない。諦めたようにため息を吐くと、後ろから低い声で注意されてしまった。


「随分余裕があるのね。練習は物足りないかしら?」

「い、いえ、そんなことはありません。付いていくので、精一杯です」

「へぇ……そう。気を付けなさい、変な態度だと、調子に乗ってると思われて、私みたいな怖い先輩に目を付けられるわよ?」


 確か……三年の浅野(あさの)玲奈(れいな)先輩だったか。鋭い目付きで睨まれてしまった。
 初日からのアピールということでは、犠牲にしたものが多かったけど、高峰先輩のプレーが見れたのだから、良しとしよう。
 部活を通して思ったことを素直に言っていいなら、意外だった。中学時代とは比べ物にならないほどハードな練習だったから。良く、先輩は一年間、辞めずに付いていけたな、と。


 新入部員の半数以上がリタイアしたり吐いて強制退場したりしていたのに、先輩は涼しい顔で練習に参加していた。根気強いのか、はたまたただの体力お化けなだけなのか?
 分からないことは多いが、これから知っていけば良い話だ。


 一番手近にある公式戦はインターハイとその予選。五月頃から始まる予定なので、それまでに先輩を化けさせれば――戦力増強は間違いない。方向性は合わないかもしれないが、強い仲間ができるのは心強いし、利用できるものは利用しようじゃないか。
 未来への期待を胸に秘めながら、部活終了後、職員室に帰ろうとする、顧問の神原先生を引き留める。キッチリとしたスーツに身を包んだ、ショートヘアーの知的な女性、それが神原先生だ。


 スカウトの件もあって何度か話したことがあるが、バスケに真剣な先生だ。有名な元選手ではないし、講師としても聞いたことがない名前だったが、赴任して顧問になってからの三年間、全国大会の切符を死守し続けている。


「神原先生、お仕事を増やして申し訳ないのですが、放課後の体育館を開放してもらうことはできますか?」

「構わないけど……練習熱心ね。そこまで頑張らなくても、あなたはレギュラー確定なのに」

「……へ?」


 神原先生のあっけらかんとした発言に、私は間の抜けた返事をしてしまった。いや、だって……普通はもう少し様子を見てから、レギュラーにするかじっくり育てるかを――


「当り前じゃない。なんの為にあなたをスカウトしたと思ってるの? あなたがチームに必要だと思ったからよ。それに、もう一人掴んだみたいだし、期待してるわ」

「は、はい……」

「九時前には切り上げて帰るのよ? 掃除も忘れずにね?」

「わ、分かりました」


 曖昧な返事をしないよう言い切ったが……もしかして、今重要なことを言われなかったか?
 『一人掴んだ』って、どういう意味なんだろう。そうやって少し考えていると。偶然、練習を途中でリタイアした子たちのフォローに回っている高峰先輩が、目に映った。
 まさか……いや、そんなわけないか。深く考えそうになった私は、かぶりを振って先程までの思考を放り捨てた。取り敢えず今は、先輩を化けさせることに集中しよう。
 そう決めた私は、先輩に頼んで、他の部員には早めに帰ってもらった。多少時間は掛かったが、部活が終了した五時から三十分も経ってないのは僥倖だ。


「それでは、始めましょうか?」

「うん。よろしくね、籠守ちゃん!」

「手始めに。まずは、高峰先輩の問題点を挙げていきましょう」

「問題点……」


 不味い、問題点は大袈裟だったか……。先輩は「自分はそこまでポンコツだったのか?」みたいな表情で凄い落ち込んでしまった。フォローしないとそれこそ問題だ。


「お、落ち込み過ぎです。あくまで、私が見ていて気になった点、というだけですから!」

「そっか~、そっか~」

「先が思いやられますね、これは……」


 一応、調子が戻るまで待ってから、指摘を始める。限界までオブラートに包みこんで話した。ゴール下でのポジション取りの仕方、シュートを打つ場所、ドリブルの完璧な姿勢、何故押し込んで行かないのか、など
 気になった点を、重要だと思うものから話し、そこの改善の為の練習が始まった。私の指示した練習をする高峰先輩の動きを逐一確認し、無駄な動作を削っていく。単純作業のつまらない練習に感じる人も多いと思うが、本来の練習というのはそういうものだ。
 何事も積み重ねが大事で、それこそが結果を出す肝だと思う。
 だから、私は厳しく指摘する。先輩が落ち込み過ぎない程度に。


「場所取りの位置が深すぎです! もっと前に出て、上のフォローが出来る形にしてください!」

「は、はい!」

 ゴール下でのポジション取りの仕方について、どこに陣取るべきか、そしてそこで陣取る意味はなにかを教える。


「なんでセンターである先輩が、ペイントエリア外でシュートを打つんですか! あなたの領域はその中(ペイントエリア内)でしょう! フリーだったならまだしも、打ちたいなら、最低七割は入るようになってからにしてください!!」

「ひぃっ! ご、ごめんなさ~い!」


 シュートを打つ場所について、どこで打つべきか、どんな状況だったら打つべきかを教える。


「腰が高いです! 幾ら手足が長くてカットしにくい位置にボールをやれても、そんな姿勢じゃ、小さい選手に入り込まれて終わりですよ! 強くドリブル出来てるんですから、もっと腰は下げて、空いた手は相手に向けてださい!」

「あぅっ。わ、分かりました!」

 ドリブルの完璧な姿勢について、どこまで下げるべきか、どの位置に手を置くべきかを教える。


「もっと力を入れて押し込んでください! 自分の長所を生かさないとか、馬鹿なんですか!? 真剣にやってください!」

「最初から真剣だよ~!」


 途中、悲鳴は幾度となく聞こえた気がしたが、殆どを無視し、一日目の練習――もとい特訓は終わった。時刻は八時半を過ぎたあたり。換気の為に開けておいた窓やドアから見た外は暗い。


「もうそろそろ上がりましょうか? これ、タオルと水筒です。後片付けは先に始めてますから、ゆっくり休んでください」

「ありがと、籠守ちゃん」

「……どういたしまして」


 短くそう返して、私は後片付けを始める。……といっても、やることは多くない。使っていたボールを籠に戻し倉庫に入れ、窓やドアを閉めてカーテンをかける。そして、最後にモップ掛けをすれば終了だ。コートにへたり込んでいた高峰先輩も、モップがけを始めたあたりから混じってきた。何故か、気持ち悪いくらいのニコニコとした笑顔で。


 さっきまでの私とのやり取りに、ここまで笑顔になれる要素があったか思い返すが、分からない。特別なことをやったつもりはない。当たり前のように接したつもりだ。


「そんなにニコニコして、なにか良いことでもありましたか?」

「う~ん、良いことがあった訳じゃないよ? ただ、再確認しただけ……かな」

「再確認?」

「そっ。籠守ちゃんは、厳しい所もあるけど、良い子だなって、優しい子だなって、改めて分かったから。それが、私は嬉しかったんだ」


 私に向けられる屈託のない笑みは、先輩の裏表のなさを表しているようで、自分の為に動いているのが恥ずかしくなって、顔をそらした。


「あれれ? もしかして、照れちゃった?」

「別に、照れてません」

「またまた~、。耳、赤くなってるよ? こもりんって呼んでいい?」


 少し――いや、大分ウザい先輩を無視し、私はモップ掛けをパパッと終わらせて、一足先に部室に向かう。流石にこの時間まで駄弁っている部員は居ないようで、部室は真っ暗。壁を手探りで伝い照明のスイッチを探すが苦戦し時間を食っていると、後から入ってきた先輩が慣れた手つきでスイッチを押してくれた。


「いやー、ここまで真っ暗だとスイッチの場所分からないよね? 大丈夫、転んだりしてない?」

「大丈夫です。ご心配、ありがとうございます」

「いえいえ」


 コロコロと表情を変える先輩は、自分のロッカーの前に行き、着替え始める。私も同じように着替え始めると、先程までとは違う真剣な声音で、先輩が聞いてきた。


「籠守ちゃんはなんで、私のこと鍛えてくれるの? 勿論、私が頼んだからってのもあるけど、最初に提案してくれたのは籠守ちゃんでしょ?」

「……さぁ、どうしてでしょうね」


 本当のことを言っても、高峰先輩は怒らない。まだ、たった数時間しか一緒にいないけれど、そんな確信に近い考えがあった。
 でも、私は言わずに誤魔化した。その理由は正直、私でも分からなかった。一言、「自分の為です」と、言えばいいだけなのに、それだけのことなのに。上手く言葉が出てこなくて、うやむやにしてしまった。
 先輩は誤魔化した私を咎めることなく、ましてや追及するなんてこと、微塵も考えてない笑顔で、話題をテキトーなものに変えた。


 帰るまでのほんの僅かな時間が、今までで一番長く感じる。ようやくここで分かった、隣にいる先輩は、私とは根本的に違う人間だと。


「また明日、部活で待ってるね?」

「……はい。また明日」


 罪悪感がチクリと、心に針を立てた。