メンバー五人が順番に十秒ずつ「たこちゅうにゅう、ふ～ふ～、もぐもぐ」をやって、最後の十秒で、五人全員が揃って「たこちゅうにゅう、ふ～ふ～、もぐもぐ」の一分動画をシンプルなリズムを被せて、キューチューブにアップした。
「たこちゅうにゅう、ふ～ふ～、もぐもぐ」という言葉はそのまま、全世界に広まり、その一分動画は、ＯＰＯＰ「おっパイナップルオッパイペン」で有名な、ポコ次郎の持つ一週間で一億四千万再生回数を上回ったのだ。
　さらに、社長の春本は、ピーチバレーズのこれまでのレッスンや、メンバーが、悩み苦
しんでいる姿を、克明に隠しカメラで記録させていた。あの「未来に帰る」とか「こっちの世界、あっちの世界」などと訳のわからないことを言っていた会話を編集して、同じくキューチューブに流した。
「未来からやって来た、たこ焼き美少女五人組」として。
　当初は、コリン星やプリン星から来たアイドルと同じく、色物と思われたのが、あまりにもメンバーたちの会話がリアルだったので、「芝居でやっているとは思えない」という噂がたった。
　日本語が堪能な在日外国人のヲタが、母国語に翻訳し、世界中にまたたく間に広まった。
　決定的だったのが、彼女たちが持っていた未来のスマホだった。全てのビジネスがスマホからスタートする時代にあって、未来のスマホに対する興味は世界中の人々の関心事。
　その未来のスマホ見たさに、彼女たちの動画を見て、どんどんはまったのだ。
　ピーチバレーズのホームページはドールキッズ社の自社サーバーで管理してある。
　キューチューブからのリンクによるアクセスで、サーバーがパンクした。
　あわあわして頭から湯気を出しているヲタ契約社員の後ろに置いてあったサーバーが熱暴走したのか「コトコト」と音を立て、隙間から煙を出している。　
　春本はその後ろに立ち、腕組みした片手の小指で鼻毛を押し込みながら薄ら笑いを浮かべていた。
「表舞台」「裏舞台」「個別インタビュー」の三本柱が、地下アイドルを売る基本中の基本。
　舞台裏の女の子たちの悩みや苦しみ、練習中の怪我や病気、仲間割れや喧嘩など、全てを撮影し、それをＤＶＤにして売りつける。