その寸劇の衣装のまま、新曲を披露する。
　最初のセンターはレイワ。
　新曲のタイトルは、
「一分間のランデブー」。社長の春本が作詞して、有名な作曲家に作らせた、肝いりの曲。
　
　チャキチャキチャキ　チャキタイム
　ＱＲコードなんて　いらないわ
　音声なんかも　入れちゃ　イヤイヤ
　はやく　はやく　出てきてよ
　たったの一分　あなたとの　デート
　ふたりだけの　たいせつな時間
　チャキチャキチャキ　チャキタイム

　サイリウムの光はまばらで、一回目の公演は、またもや微妙な受けだった。
　楽屋でみんなががっくりとうなだれていると、どうにかアンコールの声がかかる。
　元気を取り戻し、弾けたようにステージに戻る。
　アンコールの曲は、「エールを君に」だ。

　ぼくは知っている　君がいま　立ち止まっていることを
　ヲタクとよばれても
　ヒッキーと言われても
　ぼくは知っている
　君はゲームの天才さ
　君は誰より　強いんだ
　撃たれたって　転んだって
　また立ち上がって　這い上がれ
　サバゲーする君　サイコーさ！
　きみにっ、きみにっ　きみだけにあげる　このエールの歌を～

　アンコールだけあって、拍手はさっきより大きかったが、受けは、やはり、微妙……。
　ラストの曲がおわり、一旦楽屋に戻って、がっくりしていると、チャキ会がはじまった。
　パラパラとお客さんが集まっていると報告が来る。
　チャキでインスタント写真を撮って、一分間だけおしゃべりするのだ。
　別れ際には、握手かハイタッチなど接触をする。
　メンバー全員、社長の春本と広部から、
「チャキ会に参加してくれたお客さんの顔と名前をできるだけ覚えろ」と厳命されていた。
　チャキ会とは、ファンのお客が二千円払うことで、推しの女の子と一緒にインスタント写真を撮れ、その一分間に、おしゃべりができるサービスシステム。
　ひとりの女の子が一時間、六十人こなせば、十二万円儲かる。
　メンバー五人だから一時間で六十万円、運営側は実入りになるのだ。
　メンバーが、四十八人なんていたら「ウハウハウハウハ」笑いが止まらない。
　チャキの写真はカードサイズ。ファンが、下手に持って帰って、奥さんや彼女や、親に見つかったら面倒になるので、隠し持ちやすいように名刺サイズへと進化した。