エリスは晴れてウィンストン校の生徒となった。そして、エリスは、合格発表後すぐに寮生活に入ることになった。

「こちらがアーサー様のお部屋です」

 クロードに案内されたその部屋は、建物の最上階にあった。

「すごい……」

 部屋に足を踏み入れたエリスは、思わず感嘆の声を漏らした。

 なぜなら、二つのベッドルームに加え、リビング、バストイレ、キッチンまで備え付けられていたからだ。

「名門校だと聞いていたけれど、こんなにすごい部屋で寮生活を送れるなんて……!」

「この部屋が特別なのです。他の生徒たちは、相部屋で寝起きし、設備も共用です。もちろん、私のような従者もいません」

 豪勢な部屋に舞い上がっているエリスに、クロードは釘を刺した。

「それよりも、手配していた身の回りの品が届いております。部屋の整理でもされたらいかがですか。制服も届いていると思いますので、試着しておいてください」

「わかった、そうする」



 エリスは、クロードに言われた通り、部屋の片付けと学校の準備をすることにした。

 私物の類をエリスは一切持って来れなかったが、どういうわけか寝室は大量の箱で溢れかえっていた。

(これを全部開けて、一つ一つ中を確認するの……?)

 想像するだけで骨の折れそうな作業であった。

 箱の中身は大きく分けて二種類。日用品と学校関係の品だ。

 日用品は、ハーバート家から送られてきたのだろうか。どれも上等な品ばかりだった。

(えっと、制服が入っている箱は……これかしら?)

 他の箱と違い、一つだけベッドの上に置かれていた箱を、エリスは開けてみた。

 エリスの予想通り、箱のなかには制服一式が入っていた。

 ジャケット・タイ・ベスト・ズボン・シャツ……シンプルながらも上品なジャケットスタイルの制服だ。

 エリスはさっそく制服に袖を通してみた。

(あら?)

 エリスは、制服が大きめに作られていることに気がついた。

 そこで、エリスは、リビングで作業をしているクロードに尋ねてみた。

「ちょっと制服が大きいみたいだけど」

「そのことですか。それはわざとです」

「わざと?」

「ええ、この学校の生徒は、入学時に、後々の成長のことも考え、制服を大きめに作るのです。確かに、私たちはジョナサン王子の情報を得次第、この学校から去ることになりますが、最初からそのつもりで、今の体型に合った制服を着ていたらおかしいでしょう。些細なことかも知れませんが、不安の種は可能な限り先に積んでおきたいのです」