まえがき

 「しょむ系候補」とは、諸派・無所属候補を表す、「泡沫候補」に代わる造語である。「泡沫候補」の言い換えの言葉としては、「インディーズ候補」等も有名である。

 しょむ系候補・政党の中には、現職の議員を輩出し、決して泡沫とはいえない勢力も存在する。今回は主にこれらの候補・政党をクローズアップしていきたい。又、地方に蔓延る右翼勢力についてのレポートも付記する。

 尚、編集には「あくべん」(北方1号)氏が協力してくれた。この場で感謝の意を表したい。


目次

◎毎日が個人演説会
◎たんぽぽ党
◎命懸けの選挙戦
◎スポーツマンシップ、「さわやかに」散る
◎二院クラブの政党助成金受領 ~政治参加を否定する供託金制度~
◎泡沫政党に求められる事 ~日本民政党全国大会~
◎ファンシーな街宣車
◎岡山刑務所糾弾活動
◎岡山右翼・街宣車事情


◎毎日が個人演説会

 2009年松江市議選に、異色の候補が現れた。彼女の名は渡部美津子。「税金の無駄遣いを無くす」をスローガンとする市民オンブズマン出身の議員だが、ポスターは袴姿の全身写真、そして個人演説会は、選挙事務所で毎日やっているという。しょむ系候補観察家としては、行かない訳にはいかなかった。

 渡部は八雲村議を経て松江市議に当選。八雲村から松江市に引っ越し、引き続き市議選に出馬し当選したという異色の人物で、特に市長の交際費問題では、行政訴訟を連発してローカルニュースを賑わせ、全県的に一定の知名度があった。

 しかし、個人演説会に参加したのは自分1人。マンツーマンの個人演説会は、先ず少数会派の批判から始まった。1人会派の彼女にとって、会派の部屋の割り当てには相当不満があったようで、採決行動が比較的一致している共産党に対しても、批判の矛先は向けられた。

 「では1番信頼出来る市議は誰ですか?」と聞くと、彼女は真っ先に自民党の市議会議長を挙げた。「意外でしょう。でも彼が1番信頼出来るのよ。」と明るく答えた。水道料金値上げに関しては自民党と共闘するなど、「税金無駄遣い一掃」だけではなく、議会内では現実的対応をしていた様である。

 結果は再選ならず惜敗。当日選挙事務所を訪れてみると、さぞ落ち込んでるかと思いきや、カラッとした口調で「後継者を育てられなかったのが唯一心残りだけど、これでやっと肩の荷が降りたわ!」と明るく答えた。自分は2年後の県議戦への出馬を強く勧めたが、「余り気が進まないけど、まあ考えとくわ。」と答えるに留めた。

 今後の活動が期待されたが、落選直後に彼女は急逝。サバサバした性格に見えたが、内心には重圧を抱えていたのかも知れない。


◎たんぽぽ党

 岡山県和気郡和気町は、県の南東部に位置する人口1万5千人程の町。和気清麻呂や閑谷学校、棚田などで名高い、歴史ある町である。そこに『たんぽぽ党』という、不思議な名前の政党が活動している事を知った。しかも現職町議会議員が居るという。これは是非とも取材したいと思い、一路和気町へと向かった。

 駅を降りると、そこは一面に広がる田園風景。「和気行っても和気行っても青い山」と、種田山頭火の句で駄洒落てしまいそうな程だ。

 『たんぽぽ党』の党首は柴田淑子(昭和10年生)。党首にして唯一の党員、つまり一人一党である。幼少期に戦争を体験し、平和憲法の大切さと、軍の権威主義への反感を思いながら育ったという。岡山大学法文学部専攻科修了後、社会科・商業科教員を22年間務め、その後共産党町議として活動するが、締め付けの強い党組織と反りが合わず、1期で離党し『たんぽぽ党』を結党した。現在は町議会副議長も務める。党是は平和憲法の堅持や国際協調主義など。党名は「人々に身近で、踏まれても倒れない力強さを持った政党」という意味で名付けたとの事。

 彼女の元気の源は『実践倫理宏正会』主催の『朝起会』。毎朝5時から(教育勅語に基づく)家庭のあり方について学んでいるという。又、岡山大学法学部科目等履修生として、町政研究にも余念が無い。

 国政については、「政党は何処も良い事を言うが、結局は自由が無い。自民党も民主党も小沢新党も変わらない。」とバッサリ。「町議が1番地域に密着しており、住民のための政治が出来る」と、町政に意欲を燃やし続けている。福祉・教育関係は言うに及ばず、生活道路についても視察を徹底し、図面を用いて改修に努めている。一方で、利権や腐敗が横行する議会で、多数決で物事が決まる事にもどかしさを感じているという。

 彼女の選挙戦は、積極的に連呼はせず、土日は街宣車を使わないという独自の方式。連呼のみのドブ板選挙はやりたくないのだという。しかし次回の選挙は、「定数削減で厳しくなったため、ドブ板選挙をやらざるを得ない」と、悲痛な面持ちで語った。

 政党の枠組みに捉われない自由な議会活動と、お金を使わない静かな選挙活動を貫く姿勢は、市川房枝の「理想選挙」を引き継ぐものにも思われた。風に揺られるたんぽぽの様な爽やかさを感じながら、和気町を後にした。


◎命懸けの選挙戦

 1993年7月18日、第40回衆議院議員総選挙。「当国会で必ず政治改革関連法案を通す」と公約していた第2次宮澤内閣が、東京佐川急便事件などの政界疑獄には手付かずのまま、羽田グループの謀反によって不信任案を突き付けられた。後に『嘘つき解散』と呼ばれたこの選挙は、政治不信から細川連立内閣による38年振りの政権交代へと繋がる。

 当時の島根全県区は、リクルート事件以降無所属扱いの竹下登元首相以下、自民党現職が4名、候補者を1名に絞り必勝を期す社会党現職の石橋大吉(当選挙より本名の操から、大吉の通名を使用)、一時は「よし子旋風」を巻き起こした共産党元職の中林よし子(佳子)、「新党ブーム」の追い風に乗る新党さきがけ新人で日弁連常任理事の錦織淳、『左派・護憲派・市民派』と見なされ社会党の公認を外された、社会保険労務士で無所属新人の阪本清らが争う激戦区であった。

 そんな中、見た事も聞いた事もない候補者が突然現れた。彼の名は南悦雄。政党から推薦・支持を受けている訳でもなく、いわゆる「地元の名士」でもない。他候補の妨害目的で立候補する右翼という訳でもない。全く無名の新人である。

 島根という所は、政治的にはやたらと保守・反動傾向が強い。おまけに現職5名は、自民党は元首相、衆院議長、党機関紙局長、「地元の名士」、社会党は労組幹部と、どれも有力政治家ばかりである。共産党の元職でさえ元商工団体役員だ。それ故、島根で組織も知名度もない候補の出馬は、無謀な挑戦と言う他はない。そんな選挙区情勢にも関わらず、敢えて立候補した彼を注目せずにはいられなかった。

 南の選挙公報は手書きで、糖尿病と人工透析について綴っているのだが、議員になって何をするのかと言う、具体的な政策がない。第一印象は正直言って「何だこりゃ?」であった。選挙公報とは議員になって実現したい政策、すなわち公約を著わすものとばかり思っていたので、かなり違和感を覚えた。

 政見放送でも、やはり人工透析について延々と述べていた。そして、結局のところ人工透析に関する苦労話以外は、殆ど語られる事はなかった。ただ、余り良くない顔色で、たどたどしい口調ながらも懸命に原稿を読む姿と、最後に語った「皆さん、今回の選挙はしっかりいい人を選びましょう。自民党の政治を転換しましょう。」という言葉だけは、強く印象に残った。

 彼はなぜ、勝てる見込みが全くない選挙に出馬したのか。それは確かに当選目的とは言えないが、単に自己満足の為でもない。ただ、重病を抱え、なかなか思うように生活出来ない状況、重病患者対策・福祉政策の不備など、社会的弱者切り捨ての矛盾に満ちた政治、そして、そんな社会を変えよう、その為には積極的に投票しようと、自ら立候補するという手段によって訴えたかったのである。ただそれを主張し、有権者に知らせる為に、莫大な供託金を積み、病躯を酷使し命を懸けて立候補したのである。

 南は結局1255票しか得られず落選、供託金300万円も没収されてしまった。しかし、1度は自民党以外の保守政党により政権交代がなされた事(その政権の政策などが、自民党と殆ど変わらなかった事はともかくとして)、そして現在、自民党やその亜流政党・政治家に対する強い批判・不満が広がっている情勢を見ると、彼の行動は決して無駄ではなかったと言える。

 数ヶ月後、新聞地方面の『御悔やみの欄』に、ひっそりと「南悦雄(49)」の名が載っていた。彼はまさしく「命懸けの選挙戦」を戦い抜いたのだった。


◎スポーツマンシップ、「さわやか」に散る

 1995年、第17回参議院議員選挙。参院比例区(旧全国区)は昔から多数の泡沫政党が出馬する、マニアにはたまらない選挙区である。当選挙でも23もの政党・団体が立候補した。

 選挙期間まっただ中の7月半ば、東京有楽町界隈をぶらついていた私は、アヤシい街宣車に出くわす。

「さわやかさわやかさわやかね~♪」という訳の分からぬ唄を流す、黄色いハデな街宣車。そして黄色地に青文字で『さわやか新党』の幟。芸能人政党『さわやか新党』(略称:さわやか)の選挙運動であった。

 『さわやか新党』は、小林繁(当時プロ野球解説者)と高田延彦(プロレスラー)のイケメン2トップを看板に、参院選直前に予告なく結党。「政治にフェアプレーを!」「総ての小学校の校庭を芝生に!」をキャッチフレーズに、川上哲治・藤田元司(共に元読売巨人軍監督)、堀田力(元検察官、弁護士、現『さわやか福祉財団』理事長)ら、錚々たるメンバーで結成された政治団体『さわやか国民会議』を母体とする。

 しかし結党が突然で、何を目指すのか非常に分かり難く、その上どう見ても『スポーツ平和党』(プロレスラーの猪木、プロ野球の江本らによる芸能人政党。89年結党)の二番煎じで、競合するだけの感が否めず。何故このような無謀な戦いに打って出たのか、誰からも訝られた。

 その高田による街頭演説は、第一声で早速「私たちは『スポーツ平和党』ではありません!」とクギをさす。やっぱそれか。まあ中心人物2人の職業がスポ平と全く同じだから、有権者が勘違いする可能性は十分あるわな。肝腎の政策の方はどうかというと、教育問題が中心の様子。

「虐められている子どもは、スポーツをすればよいのです!スポーツで強い体と心をつくり、虐めに負けない人間を育てます!」

 何とも武道根性丸出しの精神主義。スポーツ万能の子どもでも、虐めで自殺しているというのに。虐め被害者への責任押しつけが、どれだけ被害者を追いつめているか全く理解していない。こういう実態を全く無視した考えが、教育問題の解決を阻んどるんだっつーの。

 横ではバイトのビラまき要員たちに混じって、にこやかにビラを手渡しする向井亜紀(タレント、高田延彦の妻)が。「私のこと知ってる~?」と声を掛けられた。選挙運動中に自分の宣伝するなっつーの。

 そしてヘンな王冠風のかぶり物と、派手なスーツ姿のローバー美々(NTV『どんまい!!スポーツ&ワイド』の名物コーナー『ロバの耳そうじ』で世に出たセクシータレント。ミニスカで大開脚しパンツを見せながらニュースを読んだり、ブラジャーを外し乳を見せながら天気予報したり)も。これは応援としては却ってマイナスだろ~。

 正直中身も見た目も趣味に合わないこの集団の話を、まともに聞くのは無駄と判断。しかし田舎モンの弱さ、「芸能人が生で見られる」という誘惑に負け、つまらないと思いながらも、結局最後まで演説の場にいてしまったのである。やれやれ。(^^;)

 とにかく芸能人を前面に押し出した無意味にハデなパフォーマンスと、アナクロ極まる精神主義だけが目立った『さわやか新党』の得票数は325106に留まり、候補者の高い知名度も活かせず、供託金没収の惨敗。政策も活動スタイルもスポーツマンらしからず、ちっとも「さわやか」ではなかったが、散り方だけは「さわやか」だった。

(後日談)
 高田が実話誌のインタヴューで直近に語ったところでは、元来政治には関心が薄かったものの、面識ない数名の男達(選挙ブローカー)によって昼夜を問わず尾行され、自宅に幾度も押し掛けられ、執拗に立候補を要請され続けたため、身の危険を覚え、遂に根負けして渋々出馬しただけで、『さわやか新党』の主導者が誰で(表面上の党首は小林)、選挙資金が何処から提供されたのかさえ、未だに不明のままだという。

 読売グループの組織的関与による『スポーツ平和党』への減票工作説も囁かれたが、真相は藪の中。


◎二院クラブの政党助成金受領
 ~政治参加を否定する供託金制度~

 1999年10月15日、参議院の院内会派「第二院クラブ」は政党助成金受領を決定した。供託金引き上げと所属議員の減少等による資金不足で、次期選挙への出馬が困難になった事を理由としている。

 政党助成金は全国民一人当たり250円を基準とし、議員数と得票に応じて税金を活動資金として支給する制度であり、企業・団体献金に伴う財界と政治家の癒着・腐敗を防止するという口実で導入された。しかし、

①私的団体である政党・政治団体に対し公金を支給する事は国家機関が団体の活動に介入する口実を与える可能性がある、

②国会に議席を持つ団体のみを「政党」と規定し公金を支給する事はまだ議席を持っていない政治団体と資金面で著しい差別が生じ、優劣の差を拡大する、

③支持していない団体に対しても税金によって賄うことは政党支持・不支持の自由を侵害する、

等の問題が指摘されており、「二院クラブ」は受領を拒否してきた。

 今回の路線転換は先進国内でも異常な供託金の高さがもたらした出来事と言える。「当選の見込みのない泡沫候補の出馬を制限する」事を目的として導入された。現在比例代表区への立候補には一人当たり600万円も必要とし、一定数の得票を取らなければ没収される。

 「泡沫候補の制限」というが、実際は「金の無い者の立候補を禁止」する制度である。先進国でこれだけ高額の供託金を必要とするのは日本だけで、欧米では無料か、高くても20万円程度である。この供託金制度は選挙への立候補という最も基本的な政治参加の方法を資金面で制限し、実質的に金のある者にしか政治参加を許さないという、非常に差別的な制度であると言わざるを得ない。

 選挙への立候補は全くの自由意思で行われるべきであり、思想・信条・財産などにより「制限選挙」を行う事は民主主義とは合致しない。どの候補が「泡沫」かは、投票者が決める事であり、選挙管理委員会が決めてはならないのである。

 一般市民の政治参加を否定し、新しい政治勢力の進出を著しく妨げ、現在の政治を固定化する供託金制度と政党助成制度は即刻廃止されるべきであろう。


◎泡沫政党に求められる事

 ある日、岡山市内をぶらついていると、異色な立て看板を発見。そこには「あなたが創る福祉の輪 日本民政党第4回全国大会 9/11(土)ロイヤルホテル」と書いてある。これはッ!地方ではまずお目にかかれない、泡沫政党のイヴェント告知ではないか!

 この地方でミニ政党といえば、新社会党と青年自由党くらいしか見かけなかったので、こういう得体の知れぬ政党の催しと聞いて、泡沫政党観察家としては看過できない。「党大会だから部外者の参加は不可能かな~?」と躊躇したものの、「岡山みたいな片田舎で、党大会なんて滅多にない。今回を逃せば一生コンタクトが取れんかもしれん!」と、潜入を決断した。

 立て看の告知に従い、9月11日の午前中に大会開催場所のホテルへ行ってみる。会場入口のみならず、周辺道路に至るまでド派手な巨大看板、林立する幟り旗の数々。泡沫政党の割に、随分やる事が派手だな~。宣伝に金を惜しまぬ共産党はともかく、大政党で金持ちの自民党や民主党でさえも、演説会程度でここまで派手なパフォーマンスはしない。一体どこからそんな金が捻出できるのだろ~か?

 とりあえず外部の人間が入れるかどうか、案内役のおっさんに確認したら、多分入れるとの事。よっしゃ、来た甲斐があったでぇ!ホテルに入るなり、ロビーには党章(黄色い丸に緑でMの字を抜いたもの)の入ったキンキラキンの御輿が…。なんか成金趣味くさいなぁ~。それになぜ御輿???

 趣味の悪さに軽い眩暈を覚えながらも、会場まで足を運ぶ。結構人がいる。ざっと50~60人ってところか?40~50代のおばはんが中心だ。しかし10人ほど、40代位と思しきおっさんや、何故か『日本民政党』の文字入りたすきを掛けた女子高生の姿も…。

 少なくとも見た感じでは、柄が悪そうなのはいない。名前のイメージで真っ先に思いついた、右翼系ではなさそうだ。ま、「福祉の輪」なんて言ってる所だしな。マスコミらしき人物も数名いる。何らかの形で報道されることを期待しよう(注:翌日の地元紙及び主要紙を全面調べたが、予想通り党大会に関する報道は一切なかった)。

 全国大会というだけあって地方ブロック毎に受付があり、入党相談所のみならず、何故か観光案内まで併設されている。「これはいける!」と思いつつ、総合受付で交渉を始めた。

「済みません。外部の者なんですけど、大会に参加してもよろしいですか?」

黄色いスーツに身を固めた受付のおばはんは、予想外の出来事だったらしく、一瞬戸惑いながらも、

「ええ、別に構いませんよ。」

と応える。よっしゃぁっ!

「入場料が1万円となっております。」

「1万円!?!?!?」

 な、何を~っ!?余りの金額の高さに一瞬ブチ切れそうになる。イヤ、待て待て。ここでいざこざを起こしたら、折角のチャンスが台無しになるではないか。少々腹ワタを煮え繰り返しながらも、何とか気を落ち着かせながら交渉を続ける。

「1万はちょっと払うには財布が辛いんで、せめて今日のプログラムやビラ、綱領といった政策資料などを頂けると、有り難いんですけど…。」

「ちょっと待って下さい、責任者を呼びますんで…。」

 暫くして現れたのは、50歳前後の地味な感じのおばはん。何とか望みをかける。

「何かしら?」

「え~と、外部の者なんですが、党大会に参加したかったんですけど、お金がないんで、何か資料を頂けたらと思いまして…。」

「あなたフリーの方?」

「ええ、そうですけど。」

「なら入党なさいよぉ。1万円ね。今日はパーティもあるんよ。」

 成る程…。政治資金パーティね。あの多数の広告物もド派手な御輿も、これで稼いで捻出してたっつーわけか。それにさっきから金払えんと言っとろーに。

「いや、1万円はさすがに持ってないんで、ビラとか綱領とか、何か政策が分かる資料を頂けるだけでいいんですが。」

「今日は資料とかは一切用意してないのよぉ。大会のプログラムはお金払ってもらわないと渡せないからねぇ。ごめんなさいね。」

 ちょっと待てコラ!入党相談所まで用意しときながら、党を知るための資料がないっつーのはどーいうこっちゃ!?

 内容よりパーティ出席にこだわる姿勢から見て、どうやら党大会の目的は政治資金集めだと思われた。広告物だけはド派手にばら撒きながら、政策を知らせる物を一切用意していない、そして参加希望者にとにかく金を払わせる事のみに固執する態度に、怒りを通り越して呆れ返った。

 ここで引き下がるのは、いささかプロ根性(何のプロだっつーの)に欠けると思ったが、金集めが主目的の感が拭えないこの政党に、金を払って何か価値がある事が聞けるとも思えず、その場を立ち去った。

 泡沫政党が泡沫たる主因は、言うまでもなくマスコミ等に取り上げられる機会が極めて少なく、大衆にその実態が伝わりにくい点にある。しかし、政党側にも努力を求められるものがあろう。それは至極当然だが、政策の広報宣伝である。

 活動に先立つ資金が必要なのは、分からないでもない。しかし政策を語らずに、先ず金稼ぎありきで、それが活動の主軸となってしまっては本末転倒だ。政党は何らかの政治的目的を実現するための集団であって、営利目的の企業ではない。「日本民政党は営利を目的としません」とわざわざ断わっているが、却って胡散臭さを強調していて皮肉だ。

 政党の活動資金集めは、政策の宣伝で党員・支持者を増やし、党費やカンパ、機関紙誌収入を増やすというように、広報活動と一体で行うのが筋だろう。全うでない方法で資金だけを荒稼ぎし、表面だけ取り繕ってみても、俗物ぶりを露呈し、大衆の支持を失うだけで逆効果である。このようなスタイルの政党は、その思惑とは裏腹に、決して泡沫から脱け出せないと思う。

(追記)
 毎年8月に高知市で行われる『よさこい祭り』に、日本民政党は団体参加している。あのド派手な御輿は、その時担がれた物なのか?今考えれば、県内の連絡先だけでも聞いておくべきだったよなぁ…。しまった~。

(後日談)
 悪徳商法系の掲示板で、彼らの手口が暴かれていた。「入党させた人数に応じて特典が得られる」システムで、先に摘発された福祉標榜ネズミ講の『国利民福の会』や『年金たまご』その他に類似している。どうやら政党を隠れ蓑にした、新手のマルチ団体か。

(後日談の追記)
 日本民政党は東條哲也代表の下、1996年結成、翌97年に自治省(当時)届出。東京都文京区に本部を置き、政治団体の体裁を取るものの、公式サイト上で「政治や選挙活動は行いません」「社団法人より設立手続が簡単で、法的規制も緩い政党にしました」と明言しており、誰の目にも不可解。

 「民間独自の福祉を実現」「定年やリストラのない社会」「党員は一人残らず高齢者ホームに入居できるようにする」等、逃げる余地を微妙に残した甘言で入党を勧誘しているが、結党から15年を経ても何一つ具体化していない。党費は1口1ヶ月3千円で、政治資金報告書を作製した事務担当者の氏名は「樋口恵子」、偶然の一致か?

(後日談のその又追記)
 しかも近年は公民館規模の小集会のみで、本文取材当時のように盛大な党大会が開かれた様子もなく、それどころか公式サイトには党費滞納に対する警告文や、「本当に大丈夫なのでしょうか」というQ&Aすらある。破綻は時間の問題と言って差し支えなかろう。