見えない月への道


 プラネタリウムには数え切れないほどの星々が投影されていた。

 確か装置がすごくて何千万とかもっとの星があるはず。

 そんなに星々があるけど、やっぱり目が行くのは、月。

 一ヶ月、一年があっという間に流れていき、季節も、星も、月の形もどんどんと変わる。

「ねえ、心由ちゃんは、どんな形の月が好き?」

 隣で波無ちゃんからささやいた。

 え? どうなんだろう。私は考えてから言ってみた。

「下弦の月かなあ」

 なんで? なんでだろう。

「へえ、じゃあ私は上限の月にしよっかな。合体したら満月になるし」

 ふふ。

 なるほど。

 私は見上げた。

 私たち以外にも、お客さんはたくさんいる。

 そんな中、中央のプラネタリウム装置は、目立つシルエットになっていた。

「心由ちゃん、好きな人いる?」

「えなんで?」

 びっくりしてささやき声でない声を出しちゃった。

「だってロマンチックに見上げてるんだもん」

「ええ……」

 てきとうだなあ。

 でもさ、たしかにそうかもと思うところは。

「好きな人と、見上げてたら、ドキドキするかもね」

「そっかあ」

 隣で波無ちゃんがつぶやいた。

 もうずっと見上げてるけど、プラネタリウムの世界に入っているので、首は全然痛くない。

  プラネタリウムを後にした波無ちゃんと私は、それからプラネタリウムの隣にあるカフェに行った。

 そこで昔の話から最近の話まで、たくさんおしゃべりをした。

「あ、宇宙食売ってるよ! 買おうよ!」

 そうはしゃいでいて、少し子供っぽいところもある波無ちゃんは、やっぱり昔のままのところも多かった。

 今日は会えてよかったな、波無ちゃんに。



 そういえば先輩はどうしたのだろうか。

 幼馴染さんとは会って楽しく過ごせたのかな。

 私は午後の空を観察した。

 今日は昼の月は、見えなかった。