☆   〇   ☆

 そして一週間ほどたった。

 今日は満月で、晴れてもいるので、月が綺麗に見えそうだなと思った。

 僕と心由は川辺の石段で待ち合わせた。

 川と言っても、高校の前の坂を下ったところにある川で、そんなに大きくもない。

 だけど、そんな中途半端なスケールが、ちょうどいいと僕は思った。

「先輩、やっぱり今日の月は、お昼の月に比べて最強ですね」

「ま、そうだな」

 僕は振り向いて、石段の、僕より高いところに立つ心由を眺めた。

 そのまま月に吸い込まれて、かぐや姫のシーンが始まりそうなくらい、月による光だけが心由には当たっていた。

「……先輩って、幼馴染さんと疎遠になったこと、後悔してますか?」

「それは、してるな」

「そうですか。あの、私も、大切な人と、疎遠になってしまっていて」

「まじか、それは似てるな、僕たち。まあ他にもなんか似てるところありそうだけど」

「あるかもです」

 心由はうなずくかわりに、月を眺めた。

「私がその友達と最後にあった時は、こんな月がすごい明るい夜だったんです」

「……そっか、そこは、僕とは違うな」

「はい」

 月の下であったことはおんなじだけど。

 僕は提案してみた。

「お互いさ、会いに行こうよ、それぞれ、久々に」

「なるほど……それで、お互い疎遠になっている状況を打開するわけですね」

「うん」

「いいと思います。やりましょう」

 満月の下で、僕と心由は、久々に、かつて親しかった人のところへ行くことを決めた。


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 そして、それから数日後。僕は下り方面の電車に乗って、海の方へと向かっていた。

 幼馴染が引っ越した先へと向かうためだ。

 そもそも、幼馴染と連絡を取ったのが久しぶりだった。

 無難なやり取りをしてから待ち合わせ場所を決めた。

 待ち合わせ場所は、海辺の石段。

 海辺に立つ水族館と桟橋の中間地点にある。

 終点まで乗って行って、そこで降りて、竜宮城のような雰囲気を作り出している駅舎を出て、海の方向へ歩いた。

 こんなのどかなところに住んでいるのか、千沙は。

 僕は幼馴染の名前をかるくつぶやいてみてから、砂浜へと続く通路へ足を踏み入れた。

 砂浜には人がそこそこいた。まだ、泳ぐ季節ではないけど、散歩する人々とサーフィンをする人々で、海の外も中も結構にぎやかである。

 そんな砂浜を足元に注意しながら歩いていくと、テトラポットの横の幅広い石段に、千沙が座っていた。

「久しぶりに、会うな」

「あっ! ほんとだよ遥祐(ようすけ)! やった! 会えた」

 思ったよりもテンションの幼馴染の声と、強めに来た波のしぶきが強め合ってはねた。