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「これから皆さんへの最後の投影を行います!」

 シホに投影を行った日以降、オレとリョウは大賢者連合軍の将兵たちへの投影を始めていた。隊長には軍事関連の本を、偵察兵には測量法や地質学の本を、そして兵士たちには馬の乗り方や武器の扱い方の指南書を。1万の兵全てに投影できたわけではないが、軍全体の底上げにはなったはずだ。そして、その日がやってきた。オレは投影する内容を簡単に説明する。

「ヘンタルの丘周辺の地図だ。道幅、植生、土の質、岩の位置、川の深さや速さ、それにここ数週間の天気まで、兵を動かすのに必要な情報は全て書き込んである。地の利では我々のほうが圧倒的に有利となるだろう」

 オクト軍三万が王都を発ったという情報が入ってきた。予測通りの兵力。もちろんオレたちは籠城を選ぶつもりはない。ギーブにはわずかな留守部隊のみ残し、ほぼ全軍でヘンタルの丘に陣取るつもりだ。

「あの、いいでしょうか?」

 隊長の一人が挙手した。

「ええ、どうぞ」
「具体的な作戦は? 対聖石兵器の使用以外のことは何も決まってないかと思います。実際に我々はどう部下を動かせばいいのでしょう?」
「それに関しては、現地で敵軍の動きも踏まえた上で説明します。けど、そうね。作戦の概要だけはここで説明しておきましょう」

 リョウは、オレの方をちらりと見た。オレは黙ってうなずく。

サンドイッチ(パクランチョ)作戦」

 リョウが一言、それだけ言うと議場はしん……と静まりかえった。

「え? えっと……それだけ……ですか?」
「分かりやすいでしょ? サンドイッチ(パクランチョ)作戦。何か問題が?」
「は、はぁ……了解しました」

 彼は疑問の表情を浮かべたままだったが、リョウは構わずに話を進めた。